特集 生徒を大人にする「生徒指導」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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保護者からの手紙で自分を見つめ直させる

 同校では06年度から、学校の活性化を目指す「三星プロジェクト」を始め、生徒指導の見直しを図っている。その一環として07年度からは、1年次の4月に2泊3日の宿泊学習を導入した。新入生への初期指導を一層充実させるのが狙いだ。同校出身者でもある川崎辰也先生は、次のように説明する。
 「従来、入学直後には校内で3日間の学習ガイダンスをしていました。しかし、近年、ガイダンス後に『自習の仕方がわからない』という生徒や、中学生気分が抜けず、基本的な生活・学習習慣が身についていない生徒が見られるようになってきました。そこで、合宿でじっくり教えることにしたのです」
 合宿のプログラムは、校長や同窓会長の訓話、校歌の練習、挨拶指導、自学自習の方法の指導、団体行動の訓練やクラスの団結を目的としたハイキングなどで、生徒指導を中心とした内容に学習指導を盛り込む。松 先生は、「静と動を織り交ぜた指導で生徒の自覚を促し、中学時代までの意識の払拭を図っています」と説明する。
 合宿の目玉は、「保護者から生徒への手紙」だ。入学式後、保護者に生徒に内緒で書くように頼んだものだ。内容は、生徒の名前の由来や、生徒が記憶していない幼少期のエピソード、高校生活や将来に期待していることなどだった。家庭の事情によっては祖父母に頼むなど、すべての生徒に手紙が渡されるように配慮された。下京先生はこの狙いについて、次のように話す。
 「高校生にもなると、親子が真剣に向き合う機会はめったにありません。しかし、それは自分を見つめ直すことにもつながる貴重な体験です。そこで、生徒には『サプライズ』として、この企画を実行しました」
 生徒に手紙が手渡された瞬間、会場は静まり返って、泣き出す者も少なくなかった。教師が返事を書こうと提案すると、生徒は、これまで育ててもらったお礼や高校生活の決意などをしたためたそうだ。
 「この合宿では、勉強を始める前に、まずは『鹿屋高に入って良かった』と実感してもらいたかったのです。生徒の感想や表情から、それは達成されていると考えています」(下京先生)
 合宿によって、生徒同士が打ち解けるのが早まる効果もあったという。合宿は来年度以降も継続する予定だ。


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