特集 生徒を大人にする「生徒指導」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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義務を果たし主張する生徒の「自主規制」

 初期指導では教え込みが中心だが、通常の生徒指導では、生徒の自主性を尊重するのが同校の方針だ。それを象徴するのが生徒の「自主規制」を引き出す取り組みである。
 同校では昔から生徒会活動が活発で、生徒の主張を取り入れて校則の改善を重ねたという歴史がある。その過程で教師は、生徒に対して「義務を果たしてから言うべきことを言う」という自主規制の大切さを伝えてきた。それを象徴するエピソードとして、川崎先生は自らが同校に通っていた当時の体験を挙げる。
 「当時は義務とされていた制帽着用の自由化が生徒会で議論されたことがありました。その際に先頭に立って自由化を主張したのは、必ず制帽を着用して登校する先輩だったことに驚き、そして感銘を受けました。私が本校に赴任してから、生徒会で生徒総会の議題を決める話し合いの際には、たびたびこのエピソードを話して、『自分の意見を正当に主張するには、何が必要か』ということをじっくり考えさせています」
 こうした指導の積み重ねにより生徒の規範意識は高まり、決められたルールを守ろうとする姿勢が身につく。その結果、生徒には意見を主張する場が与えられ、自主性も育まれていくのだ。
 生徒の主張を尊重する取り組みとして、同校では毎週月曜日の全体朝礼の前に生徒会主導の生徒朝礼という時間を設けて、2クラスの代表がそれぞれ文字にして800字程度のスピーチを行う。これが「生徒主張」と呼ばれ、同校の伝統の一つになっている。
 スピーチの内容は自由だ。学校生活の改善を提案する生徒もいれば、社会情勢や時事問題、人間関係などに関して意見を述べる生徒もいる。スピーチをする生徒は自分から立候補する場合が多いが、担任が生徒の様子を見ながら促すこともある。また、スピーチは年度ごとに冊子にまとめ、生徒に配付している。
 「今のように制度化されていなかったとはいえ、私が本校の生徒であったころから生徒が意見を主張する場はありました。それが今も続いているのは、生徒の自律が保たれてきた表れでしょう。インターネットの普及などもあって、今の生徒は大量の情報をインプットしますが、アウトプットする場所は意外と少ない。その点でも貴重な機会になっています」(下京先生)


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