私たちの研究が社会に還元されることで、今後、実際に建造物を建てる場合、その場所に建てるなら、どのくらいの免震性能・耐震性能(※4)が必要かを正確に割り出すことができるようになります。地震動は場所によって大きく異なるので、まさに日常生活に直接影響を与える問題です。
更に長期的な貢献としては、政府や自治体への働きかけが挙げられます。今、多くの市民は東南海や南海、東海、首都圏直下型などさまざまな地震に恐怖を感じながら、具体的にどんな対策を講じればよいかわからない状態ではないでしょうか。確かに、市民を啓蒙する意味では、妥当な予測の範囲で上限となる被害をアピールすることは大切かもしれませんが、不安感だけを煽っても意味はありません。最新の技術を使えば、もっと現実的で、合理的なレベルの情報提供ができるはずです。
私たちが「備えあれば憂いなし」の発想で耐震補強をしていったとき、費やされる社会的コストは膨大なものになります。しかし、本来は、壊れる建物には十分な補強をし、その必要のない建物には「この場所なら、補強はしなくてもいいですよ」と言って安心させてあげることが必要だと思うのです。それが、危険かどうかきちんと線引きができる科学を手にしつつある者としての、日本経済への重要な貢献だと思っています。
|