未来をつくる大学の研究室 地震工学
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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 私たちの研究が社会に還元されることで、今後、実際に建造物を建てる場合、その場所に建てるなら、どのくらいの免震性能・耐震性能(※4)が必要かを正確に割り出すことができるようになります。地震動は場所によって大きく異なるので、まさに日常生活に直接影響を与える問題です。
 更に長期的な貢献としては、政府や自治体への働きかけが挙げられます。今、多くの市民は東南海や南海、東海、首都圏直下型などさまざまな地震に恐怖を感じながら、具体的にどんな対策を講じればよいかわからない状態ではないでしょうか。確かに、市民を啓蒙する意味では、妥当な予測の範囲で上限となる被害をアピールすることは大切かもしれませんが、不安感だけを煽っても意味はありません。最新の技術を使えば、もっと現実的で、合理的なレベルの情報提供ができるはずです。
 私たちが「備えあれば憂いなし」の発想で耐震補強をしていったとき、費やされる社会的コストは膨大なものになります。しかし、本来は、壊れる建物には十分な補強をし、その必要のない建物には「この場所なら、補強はしなくてもいいですよ」と言って安心させてあげることが必要だと思うのです。それが、危険かどうかきちんと線引きができる科学を手にしつつある者としての、日本経済への重要な貢献だと思っています。

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高校生へのメッセージ
物理的イメージを持つことが新しい世界を開く
 地震工学では数学の力が重要です。しかし、もっと大事なのは、「イメージする力」だと私は思います。式で理解するだけでなく、その物理的イメージを理解することです。特に、新しいテーマを考えようとするとき、力の流れや重なり具合といった物理的イメージができないと、新しい世界は見えてきません。また、物理学の考え方を天文学に使うようなアナロジー(類比推理)は、自分なりのコンセプトイメージがあって可能なものだと思います。ですから、物理の問題を解く際にも、できるだけイメージを描くようにしてほしいと思います。
用語解説
※5 免震性能・耐震性能  免震とは、地盤と建物との間に設置した水平方向に変形しやすい「免震装置」で地震の揺れを吸収する仕組み。耐震は、強い揺れでも倒壊しないよう、建物全体を補強して強度を高める方法。

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