指導変革の軌跡 埼玉県・私立浦和学院高校
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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データベース化により全教師が面談情報を共有

 まず、同校が取り組んだのが、生徒の進路意識を高めるための面談の充実だ。特に、学力がそれほど高くないⅡ・Ⅲ類の生徒に対しては、面談を通して自信をつけさせ、早期に受験に向けた意識付けを図る必要がある。
 1、2年次の二者面談は、1、2学期各2回、3学期1回の年間計5回行う。面談の流れは以下の通りだ。まず、面談前のLHRで「面談準備シート」(図1)を生徒に記入させ、それを基に面談を行う。それぞれの面談は「将来の方向性を決める」(1年次第4回)、「進路を仮決定する」(2年次第5回)など、面談シラバスによってテーマが決められており、面談準備シートの内容も、将来の夢や志望学部・学科などテーマに応じて変わっていく。

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図3、4
※第2学年第4、第5回の面談準備シートは下記からダウンロードできます
■第2学年 第4回面談準備シート(入試形態を考える) Wordダウンロード(33KB)
■第2学年 第5回面談準備シート(進路を仮決定する) Wordダウンロード(72KB)

 進路指導主幹の石原正規先生は、「面談準備シートで大切なのは、考えるきっかけを与えること。面談というと、教師が一方的に生徒から話を聞き出すということになりがちですが、シートを書くことによって、生徒が事前に考えをまとめておけるようになりました。次第に生徒から発信する面談へと変わっていったのです」と話す。3年次にもなると、自ら進路室に足を運び、積極的に教師に面談を求める生徒が増えるという。
 面談終了後は毎回、シートの記入内容や面談の結果、担任の所感などの情報をコンピュータに入力、データベース化してすべての教師が共有できるようにしている。
 進路情報のデータベース化は、改革以来の同校の特色の一つだ。面談結果だけではなく、模試の成績、評定平均値、出欠状況、志望校など、進路に関するあらゆる情報が蓄積されている。3学年進学指導主任の菅原美香先生は、そのメリットを次のように話す。
 「生徒一人ひとりのデータは、『個別情報一覧表』として、すぐにパソコン画面上で見ることができるようにしています。生徒の出欠状況や志望の推移なども時系列で見られるため、生徒の心の変化や成長も把握でき、より充実した面談が可能になります。例えば、生徒が志望変更で悩んでいる場合は、過去からの志望の推移を抽出して一覧にします。以前からたびたび変更している生徒なのか、志望が一貫していた生徒なのかなどを把握することができ、生徒に合った対応ができます」
 保護者の中には、家庭での会話不足のために、子どもの進路意識をつかみかねている人もいる。データベースがあれば、担任はいつでも生徒の状況を的確に伝えられるため、保護者からも高い信頼を得られるという利点もある。


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