同校では実社会で求められる「リテラシー」の修得にも力を入れている。Ⅰ類では「総合的な学習の時間」の枠で行う「リテラシー・プレゼンテーションⅠ・Ⅱ」、Ⅱ・Ⅲ類では独自教材により小論文を書く力やディベートの力を身につける「リテラシーの時間」を実施している。
Ⅰ類の「リテラシー・プレゼンテーション」は、主にプレゼンテーション能力を高めることが狙いだ。1年次にメディアの情報を取捨選択し、それを発信していく「メディアリテラシー」の手法を修得。その上で、2、3年次にディベートやプレゼンテーションを通して、情報を効果的に伝える方法を身につける。
Ⅱ、Ⅲ類の「リテラシーの時間」では、推薦入試やAO入試を視野に入れ、小論文や志願理由書に対応できる文章力や論理力を身につけさせる。毎週木曜日の6時限後の30分間を使い、同校が独自に作成した教材に取り組ませる。指導するのはクラス担任だ。
1年次には、例文を正確に書き写す作業から始まり、原稿用紙の使い方やメモを取る練習、文章の要約、キャッチコピーの作成、4コマ漫画を題材にして起承転結を学ぶなど、さまざまな形式の日本語に触れる。2年次からは小論文を書き始めると共に、ディベートを行い、相手の話を聞く力、自分の意見を口頭で発信する力を身につける。
それらを土台として、3年次では課題文型の小論文や、テーマ型の小論文などに取り組み、あらゆる出題形態に対応できる実践力を養う。テキストは国語科を中心とした担当教師3名が、講習会に参加したり他校の実践を研究したりして独自に作成したものだ。
特筆すべき点は、国語科以外の教師でも小論文指導ができるよう、授業ごとに教師用マニュアルが用意されている点だ。
「マニュアルには、指示の出し方や発話の方法、効果的な問いかけの言葉、ディベート時の机の配置など、アドバイスが細かく書かれています。国語科以外の教師でも効果的な指導ができる上、小論文指導のノウハウも身につけられます」(菅原先生)
現在、「リテラシーの時間」の前には、教師同士がマニュアルを片手に指導の仕方を確認し合う光景が見られるという。異なる教科の教師同士が、学習指導について日常的に語り合うことはこれまでなかった。指導力の向上が教師にやりがいを感じさせ、教師間の結束をも強めている。
改革に着手して3年後の05年度、成果は入試実績に表れた(図2)。04年度1名だった国公立大合格者数は11名に増え、06年度には20名の大台を突破した。現役進学率も04年度の68・4%から05年度には78・8%に上昇し、その後も80%台で推移している。「先生方の創意工夫の結果」と、原田教頭は胸を張る。 |