指導変革の軌跡 京都府・私立福知山淑徳高校
京都府・私立福知山淑徳高校

京都府・私立福知山淑徳高校

2007年に創立83年を迎える。「感恩先苦」を校訓、「ひとり立ち出来るウデとチエ」を教育目標とし、自立・自律できる生徒の育成を目指す。アパレルファッション、幼児教育、介護福祉などの6系列により、生徒の関心や進路に応じた指導を行う。

設立●1924(大正13)年

形態●全日制/総合学科/共学

生徒数(1学年)●約200名

07年度進路実績●進学は4年制大15名、短大36名、専門学校59名で計110名。就職は介護看護8名、調理9名、販売6名、サービス8名、製造機器13名、製造食品5名、運輸2名、建築1名など計64名。

住所●京都府福知山市字正明寺36-10

TEL●0773-22-3763

WEB PAGE●http://www2.nkansai.ne.jp
/sch/shukutoku/


奥田彌進夫

▲福知山淑徳高校校長

奥田彌進夫

Okuda Yasuo

教職歴43年目。同校に赴任して35年目。「何のための学校かを考え、自分自身を大切にできる生徒を育てたい」

多名賀基文

▲福知山淑徳高校

多名賀基文

Tanaka Motofumi

教職歴33年目。同校に赴任して27年目。進路部長。「一回きりの人生を幸せにする力を身につけてほしい」

桐村操

▲福知山淑徳高校

桐村操

Kirimura Misao

教職歴・赴任歴共に25年目。3学年主任。「チャレンジ精神と豊かな心を持った生徒を育てたい」

水野良子

▲福知山淑徳高校

水野良子

Mizuno Yoshiko

教職歴23年目。同校に赴任して21年目。1学年主任。「夢を実現できる力を身につけてほしい」

下川直輝

▲福知山淑徳高校

下川直輝

Shimokawa Naoki

教職歴20年目。同校に赴任して15年目。2学年主任。「自分に限界を設けず、あきらめない姿勢を身につけてほしい」

VIEW21[高校版] 新しい総合学科のパートナー
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指導変革の軌跡92


京都府・私立福知山淑徳高校「総合学科」

総合学科に再編し、生徒の自立と自律を支える指導を徹底

● 実践のポイント
生徒の多様なニーズに対応し、専門学科を再編して、総合学科として再スタート
「書く」指導を徹底し、内面を振り返らせ、自立・自律できる力を身につけさせる
「クラス別進路学習」により、将来を見通し、目標を持って進路選択ができる力を養う

総合学科への改編で生徒の多様なニーズに対応

 福知山淑徳高校が京都府で初めての総合学科の高校として新たにスタートしたのは、1997年だ。その背景の一つは志願者数の減少だ。被服科は1クラス20名程度にまで減少。保育科は、96年に高校卒では保育士免許の受験資格が取得できなくなったため、科の魅力をアピールしづらくなっていた。更に、福知山市には公立3校、私立4校の高校があり、他校にない魅力を打ち出さなければ学校の存続が危うい状況だった。しかし、それ以上に深刻だったのは、専門学科に分かれて学ぶ縦割りのクラス編成がもたらす弊害だった。奥田彌進夫(やすお)校長は次のように述べる。
 「専門学科では卒業まで一つの科に在籍するので、専門的な知識と技術を身につけられる反面、ミスマッチがあっても転科できないという問題がありました。選択を誤った生徒の中には、ドロップアウトしていく生徒が少なくありませんでした。科別に生徒を育てる従来の体制では、生徒の多様なニーズを受け止めきれなくなっていたのです」
 そんな同校が、新しい教育の姿として着目したのが、当時、新たに制度化された総合学科だ。幅広い科目群から生徒が自由に選択できるため、一人ひとりの関心や進路に応じた学びが可能になる。まさに、同校が求めていた新しい教育の形だった。
 同校は総合学科への改編を決意。97年に被服科、保育科、普通科を統合して総合学科に移行、01年には食物科を吸収すると同時に男女共学とし、新たなスタートを切った。

異なる進路を目指す生徒同士が刺激し合う

 同校では、専門技能を体系的に身につけられるよう、「系列」という六つの履修モデルを設定している(図1)。これはあくまで履修モデルのため、科目は系列を超えて選択でき、進級時に他系列に移ることも可能だ。
図1
 また、HRや必修科目の授業は、異なる系列の生徒が交ざり合った一つのクラスで行う。ここで得られる刺激が、生徒を活性化させていると、3学年主任の桐村操先生は指摘する。
 「以前は、ほかの科の生徒が何を目標に、どのように頑張っているのか、生徒も教師も知りませんでした。今では、保育を目指す生徒、服飾を目指す生徒など、夢も目標も異なる生徒が共に活動するため、互いに刺激し合い、異なる価値観を持つ人を尊重する気持ちを育んでいます。生徒が切磋琢磨する雰囲気が、学校全体を活性化させていると感じます」
 同校には、学年を超えて生徒が刺激し合う場面も多い。1~3年生混合で履修する「総合講座」がそれだ。「洋裁」「英会話」「人形劇」「ボランティア」「和太鼓」など全35講座が用意されている。1学年主任の水野良子先生は、「新しい何かに挑戦することで、今まで見えなかった自分を発見してもらうことが狙いです。技を極めた先輩の指導を受ける場面も多く、下級生にとっては大きな刺激になっています」と語る。
 「和太鼓」や「民族舞踊」「人形劇」では、練習の成果を校外で発表する機会もある。玄人はだしの技を見込まれ、自治体主催の行事、幼稚園や養護施設からの公演依頼が引きも切らないという。特に「和太鼓」は人気で、06年度は35回も公演が行われた。「生徒の自信になるだけでなく、地域に本校を知ってもらう良い機会にもなっています」と奥田校長は述べる。

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