指導変革の軌跡 京都府・私立福知山淑徳高校「総合学科」
VIEW21[高校版] 新しい総合学科のパートナー
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独り立ちできる力を育む進路指導を推進

 新たな学校像を提示し運営を軌道に乗せた同校は、04年に進路指導の強化に乗り出した。同校の進路指導は、進学者・就職者数の増加そのものが目的ではない。進路部長の多名賀基文先生は、次のように述べる。
 「私はかねてから、多くの教師が進路指導を単なる出口指導と考えていることに疑問を感じてきました。本当に大切な進路指導は、生徒が社会に出て独り立ちできる力を身につけさせることではないでしょうか。本校には『感恩先苦』という校訓があります。親や先祖など自分を取り巻く人々の恩をしっかり受け止めて、一度きりの人生を幸せに生きるために、自ら進んで苦労せよという意味が込められています。総合学科になって経営的に安定した今こそ、創立当初の精神に立ち返り、真に生徒の立場に立った進路指導の在り方を模索すべきだと考えました」
 まず取り組んだのは、3年間の進路指導の体系化だ。1年次では「産業社会と人間」を中心に、卒業生や専門家の講話を取り入れながら、自分の進路について考える。2年次ではその成果を踏まえて企業・学校見学などを通して視野を広げ、自分の将来を模索する。いずれも「自立・自律」「共生」「価値観」を柱として、生きる力を養うことに主眼を置く。

図3

 本格的な進路指導が始まるのは3年次だ。重視するのは「クラス別進路学習」だ。「働く意味」に始まり、面接のポイントや履歴書の書き方、マナーや労働基準法の基礎まで、実社会で役立つノウハウを盛り込む(図3)。企業や大学、行政機関などを訪問して得た情報を基に、多名賀先生が独自に開発したものだ。授業は先生自らが講師となって、週1時間ずつ、全5クラスそれぞれで行う。  活動の中で、多名賀先生が徹底的に何度も生徒に問いかけるのは、どのような人生を送り、何を実現しようとするのかということだ。「生徒に伝えたいことはただ一つ、『幸せになれ』ということです。進学や就職はそのための過程であり、手段です。自分の人生とは何かをしっかり考えさせ、幸せになる力を身につけさせることが、プログラムの最大の目的です」と、多名賀先生は話す。


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