特集 高め合う担任の進路指導力
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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新しく赴任してきた教師が研鑽を積む「ケーススタディ」

 白井先生からは「生徒は手をかけた分伸びる」とよくアドバイスを頂きました。いつもたくさんの添削用のノートを抱えている白井先生を見て、私たち英語科も「とことん生徒に手をかけよう」と自前の教材をつくったり、特別補習を行ったりしました。進路指導でも多くを学びました。当初、私の指導は「現役で受かる大学」にこだわったものでした。しかし、先輩の先生方の指導を見て、たとえ現状の学力が低くても、その生徒に合った大学、進むべき大学を目指させ、そこに現役で合格させるような指導をすべきだと気がつきました。特に、生徒の伸びしろを見込んで、高望みであってもその大学を目標にさせ、しかも現役で合格させる「攻めの進路指導」は、白井先生が進路指導主事を務められたとき、進路指導部での仕事を通して学びました。生徒の希望をそのまま鵜呑みにするのではなく、担任が生徒の人生に首を突っ込み、より良い方向に気づかせる。それが進路指導だと教わりました。とことん手をかけた生徒の進路であれば、自分のことのように真剣になるのは当然です。
 岡崎高校には、教師が学ぶ場面が多くありました。例えば、面談は職員室でやるのが原則で、生徒と教師が膝を突き合わせて話をし、他の先生もそれとなく聞くわけです。私自身「こんな声かけがあるのか」と刺激を受けたことが何度もあります。
 また、とにかく飲み会が多く、何かあるとすぐ教師が集まりました。話題はいつも生徒のこと。ときにはおしぼりをぶつけ合うくらい真剣に、一人ひとりの生徒についてみんなで話し合う中で、私は「学年団の先生と生徒は、運命共同体なんだ」と実感しました。そして、これほど真剣な人たちと同志として一緒に仕事をしていくことに喜びを感じました。
 事実、学年団の結束は固く、模試で弱点となっている教科・科目が明らかになれば、学年団がすぐに集まり、SHRの時間に全クラスでその分野の小テストを実施しようと話し合いました。「今月は英語強化月間だ」などと教科の枠を越えて意思統一し、すべての先生が協力して行動する。こうした関係が、生徒を指導する上で大切だということも先輩、同僚の先生たちから学びました。
 近年、私は、若い世代の先生が生徒の中にのめり込むことを少しためらっているように感じます。しかし、自分の持っているすべてをぶつけるつもりで生徒と向き合ったとき、得られる喜びは本当に大きなものになります。教師の喜びは、生徒の人生を生き、生徒の感動を自分の感動とできることだ…私はそう思います。

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