校外での体験学習も新たに導入した。「コミュニケーション(CM)授業」では、2年生(現在は1年生)の生徒全員が隔週で地域の幼稚園や保育所を訪れ、子どもと交流する。
「先入観がなく純粋な心で接してくれる子どもとの交流を通じて、自尊感情や効力感を育むことができるのではないかと考えました」(齋藤先生)
当初、校内にはCM授業に反対の声も多かった。子どもに怪我をさせたらどうするのか、子どもの保護者から反対の声が挙がるのではないか。しかし、そうした杞憂も訪問するたびに薄れていったという。3学年主任の寶谷亮介先生は次のように話す。
「最初は戸惑っていた生徒も、子どもと一緒に食事や昼寝をし、『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』と慕われるうちに、親身に世話をするようになります。生徒の中には、中学時代から周囲から期待されることが少なく、他人から頼られた経験があまりないという生徒が少なくありません。相手が小さい子どもでも、頼られることで自然と責任感が芽生え、自信がわいてくるのです」
訪問先では、学校とは異なる面を見せる生徒も多かった。普段はほとんど笑わない生徒が、子どもを前に満面の笑みを見せた。幼稚園教諭に将来の夢を語る生徒もいた。子どもや幼稚園教諭との交流を通して、人間関係・信頼関係の大切さに気づくようになったのである。 |