指導変革の軌跡 群馬県立藤岡中央高校定時制
群馬県立藤岡中央高校定時制

群馬県立藤岡中央高校定時制

藤岡中央高校は、藤岡高校と藤岡女子高校との統合により、2005年に誕生した。全日制と夜間の定時制課程を設置。全日制は、文理総合科と数理科学科の2学科。定時制では、不登校の生徒を中心に受け入れている。

設立●2005(平成17年)年

形態●定時制/普通科/共学

生徒数(1学年)●10数名

07年度進路実績●駿河台大、明和短期大、聖徳大(通信教育学部)、放送大、(株)総合スタッフ、(株)丸新運輸梱包、日栄工業(株)

住所●群馬県藤岡市中栗須909番地

TEL●0274-22-1406(定時制)

WEB PAGE●http://www.gsn.ed.jp/gakko/
kou/ftyuouhs/


橋本曉夫

▲群馬県立藤岡中央高校定時制校長

橋本曉夫

Hashimoto Akeo

教職歴35年目。同校に赴任して3年目。「独立独歩。どんなことにもひるまない、ということを心がけています」

山口和士

▲群馬県立藤岡中央高校定時制教頭

山口和士

Yamaguchi Kazushi

教職歴29年目。同校に赴任して2年目。「どんなときも生徒を信じ、常に生徒と共にありたい」

塚田元樹

▲群馬県立藤岡中央高校定時制

塚田元樹

Tsukada Motoki

教職歴30年目。同校に赴任して6年目。教務主任。「生徒一人ひとりとじっくり向き合っていきたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路意識向上のパートナー
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指導変革の軌跡96


群馬県立藤岡中央高校定時制「進路意識向上」

「定時制」の固定概念を払拭し生徒の進路意識を広げる

● 実践のポイント
授業公開や進路指導研究により、教師の指導力を高める
校内漢字テストや資格取得講座で、生徒のやる気を引き出す
きめ細かな面談と進路講演会で、生徒の進路意識を醸成する

不登校の生徒を積極的に受け入れ、地域の信頼を得る

 「定時制高校の生徒だからといって、将来を限定してしまう必要はない。その気になれば、大学進学だって十分可能なのだから」  こうした考えの下、進学者ゼロから、生徒の半数(8名中4名)が短大・大学へ進学するという実績を上げ、定時制高校の固定概念を覆したのが、藤岡中央高校の定時制課程だ。
 藤岡中央高校は、110年の伝統を持つ藤岡高校と藤岡女子高校を統合し、05年に設置された。全日制は文理総合科と数理科学科があり、地域から今後の飛躍が期待されている進学校だ。一方、定時制課程は、全校で約50名。夜間の4年制で、1学年1クラス、教師は1教科1名と、小規模で運営されている。橋本曉夫校長は、「高校生全体の傾向として社会参加の意識が低いのが気になります。全日制、定時制課程共に、ボランティア活動への積極的な参加を促し、社会に役立つ生徒を育成するのが本校の目標の一つです」と語る。
 定時制課程で教頭を務める山口和士先生は、「定時制といえば、昼間は働く勤労学生や全日制に手が届かなかった生徒というイメージですが、実は、義務教育の段階で不登校やひきこもりだった生徒も多いのです」と説明する。
 同校では、前身の藤岡高校時代から、当時、社会問題となり始めていた不登校等の生徒を積極的に受け入れてきた。現在は、近隣の中学校や地域からも「不登校の生徒を再生させる学校」として信頼を得ている。

「定時制=限定された将来」という構図を覆す

 しかし、06年度からそうした生徒をただ受け入れるだけではなく、「もう一歩先に進むべきでは」という声が一部の教師から上がり始めた。それが、冒頭のスローガンである。
 「今でも『定時制は全日制に行けなかった生徒が進む学校』『定時制では進学を目指せない』という偏見があります。教師も保護者も、そして生徒自身も、定時制ということであきらめてしまっていることが多い。赴任当初、職員室には、ほこりをかぶったままの進路情報誌が1冊あるだけでした。進路の選択肢が限られてしまっている状況に、深く考えさせられました」と山口教頭は語る。
 教務主任を務める塚田元樹先生は、「義務教育をきちんと終えられなかったために、学力が低い生徒は確かに多い。しかし、彼らの能力が低いわけではありません。不登校の生徒が増えてきているという現状を考えても、『定時制の生徒は卒業さえできればよい』という発想は変えていく必要がある。卒業後の未来までしっかり考えさせることが大切なんです」と強調する。
 そのためにはまず、教師自身が変わる必要がある・・。そう考えた同校の教師は、自身が知識を得るため、進学情報誌を読み、専門学校や大学・短大の実情を把握し、県内や近県の大学・短大についても調べ始めた。併せて、入試問題や模試も研究し、生徒の進学をサポートできるよう準備を進めた。
 また、生徒が進学を目指せるだけの学力を身につけるためには、教師の教科指導力の向上も欠かせない。教師同士で研究授業を行うだけでなく、一般にも公開。授業を客観的に見てもらう機会を多くつくった。更に授業評価表を活用し、山口教頭と教科担当の教師が指導方法について話し合える面接の場も設けた。
 「学力にバラツキのある生徒一人ひとりに対して、基礎が身につくように指導を繰り返すのは大変です。しかし、少人数の定時制だからこそきめ細かな指導ができる、という新たな認識を持ってほしいと思いました」(山口教頭)

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