しかし、今まで学校に通うことすら難しかった生徒が、入学後すぐに将来を考えられるようになるわけではない。同校では4年間じっくり生徒と向き合いながら成長を見守り、進路意識を醸成していく。1年次では人間関係が最大のテーマだ。
「学校に馴染むには、友だちづくりが一番重要です。しかし、慣れない環境でストレスが溜まり、トラブルになることもあります。そういうときには、教師が仲裁したり、違う友人や先輩に働きかけてもらったりしています」と塚田先生は話す。
生徒の複雑な心の動きや人間関係をつかむためには、普段から生徒をよく観察することも欠かせない。塚田先生は、授業中でも、ちょっとしたことでも、生徒の変化を捉えたら、「お、今日は眼鏡をかけているじゃないか。何かあったのか?」などと声をかけて生徒の状況を確認する。
また、1時限目終了後にある夕食の時間では、食堂に生徒と教師が集まり、食事を共にする。
「教師が一人ひとりの状況を確認し、生徒同士がコミュニケーションを図る場になっています。1人でいる生徒がいれば、必ず教師が隣に座り、声をかけるようにしています」(山口教頭)
このようなきめ細かな教師のサポートによって学校に慣れた生徒は、2、3年次で将来への土台をつくる。
「生徒は、『どうせ自分はだめだ』と限界を決めてしまっていることも多い。2、3年次では、生徒に達成感を味わわせながら自信をつけさせる工夫をしています」(塚田先生)
学期に2回行われる「校内漢字テスト」も、そうした工夫の一つだ。課題をこなしながら準備を進め、90点以上取ると賞状がもらえる。「総合的な学習の時間」には、資格取得のための五つのコース(ワープロ検定、漢字検定、英語検定、数学検定、硬筆書写検定)を設け、資格取得を目指す。試験の合格者は、保護者や地域の人々に配る隔月刊の広報誌「定時制便り」(図1)に名前を紹介する。 |