指導変革の軌跡 群馬県立藤岡中央高校定時制「進路意識向上」
VIEW21[高校版] 新しい進路意識向上のパートナー
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生徒が達成感を味わえるよう工夫を凝らす

 しかし、今まで学校に通うことすら難しかった生徒が、入学後すぐに将来を考えられるようになるわけではない。同校では4年間じっくり生徒と向き合いながら成長を見守り、進路意識を醸成していく。1年次では人間関係が最大のテーマだ。
 「学校に馴染むには、友だちづくりが一番重要です。しかし、慣れない環境でストレスが溜まり、トラブルになることもあります。そういうときには、教師が仲裁したり、違う友人や先輩に働きかけてもらったりしています」と塚田先生は話す。
 生徒の複雑な心の動きや人間関係をつかむためには、普段から生徒をよく観察することも欠かせない。塚田先生は、授業中でも、ちょっとしたことでも、生徒の変化を捉えたら、「お、今日は眼鏡をかけているじゃないか。何かあったのか?」などと声をかけて生徒の状況を確認する。
 また、1時限目終了後にある夕食の時間では、食堂に生徒と教師が集まり、食事を共にする。
 「教師が一人ひとりの状況を確認し、生徒同士がコミュニケーションを図る場になっています。1人でいる生徒がいれば、必ず教師が隣に座り、声をかけるようにしています」(山口教頭)
 このようなきめ細かな教師のサポートによって学校に慣れた生徒は、2、3年次で将来への土台をつくる。
 「生徒は、『どうせ自分はだめだ』と限界を決めてしまっていることも多い。2、3年次では、生徒に達成感を味わわせながら自信をつけさせる工夫をしています」(塚田先生)
 学期に2回行われる「校内漢字テスト」も、そうした工夫の一つだ。課題をこなしながら準備を進め、90点以上取ると賞状がもらえる。「総合的な学習の時間」には、資格取得のための五つのコース(ワープロ検定、漢字検定、英語検定、数学検定、硬筆書写検定)を設け、資格取得を目指す。試験の合格者は、保護者や地域の人々に配る隔月刊の広報誌「定時制便り」(図1)に名前を紹介する。

図

 塚田先生は、「生徒の努力をどのように結果につなげ、評価をしていくかを考えることが大切。賞状を渡すなど、努力が形として残るようにすると、達成感につながり、モチベーションも上がっていきます」と話す。授業も、一人ひとりの習熟度に合わせ、きめ細かな指導を行う。
 橋本校長は、「社会の役に立っているという実感を持たせる経験も、生徒の自信につながっている」と語る。
 「例えば、不登校の経験を生かして、同じ境遇の後輩の世話をするなどのボランティア活動を、今後も積極的に考えていきたいですね」(橋本校長)


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