4年次になると、進路希望調査、二者面談、三者面談を繰り返す。例えば、進学か就職かで揺れる親子の面談では、夜中の12時ごろまで話し合ったこともあった。
「定時制に入学したことで、親戚から『この子はもうだめだ』と冷たい目で見られていると泣いて訴えた母親と女子生徒がいました。でも、『その限界を決めるのはだれですか?』と励まし、何度も面接を重ね、将来やりたいことを一緒に探していきました」と塚田先生。生徒は一度は進学をあきらめたものの、結局、保育士になりたいという夢を固め、短大に進んだ。今では学生自治会の役員にもなり、毎日休まず短大に通っているという。
「生徒は『変わりたい』と切実に願い、きっかけを探しています。大切なのは、距離感とタイミング。落ち込んでいるときには、後ろ向きに考えてしまいがちですから、そのときはそっと見守り、少し話を聞ける状態になったら声をかけ、再度将来について話し合う。教師にとっても根気のいることですが、一歩踏み込んで生徒と対話するよう、先生方とも話をしています」(塚田先生)
また、生徒の進路観を醸成するため、同校では06年7月に初めて「進路ガイダンス」を行った。テーマは勉強することの意義について。大学、短大、専門学校がどんな生徒を求めているのか、進学するとどのような力がつき、社会に貢献できるのかを、外部講師が解説した。一般に定時制ではハローワークによる講演が中心で、進学に絞ったガイダンスは異例のことだが、講演中、生徒は食い入るように講師の話を聞いていたという。「もっと学ぶことによって自分を知りたい」「これまで全く考えていなかった社会の情勢がわかった」などの生徒の声も聞かれ、多くの生徒の進路意識が広がった(図2)。
そして、04年度はゼロ、05年度はわずか1名だった大学・短大進学者は、06年度には4名となった。
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