「How are you?」
松井先生の快活な挨拶と共に授業が始まる。松井先生は頃合いを見計らい、生徒に手元のプリントへと目を向けさせる。単元ごとに作成する「Supplementary Handout」という生徒向けの補助教材だ。単元で扱われているイディオムや文法事項が書かれている。これを授業1週間前に生徒に配付し、当日までに読んでおくよう指導する。ただし、本文についての予習を生徒に課すことはしない。
「予習というと、生徒が和訳に走る可能性があるためです。英文を完璧にわからなくてもいい。英語を英語のまま理解できる力を身につけてほしいのです」と松井先生は話す。
授業では、前回に引き続き関係代名詞「what」を扱う。松井先生は10名ほどの生徒を指名し、前回習った関係代名詞を使った文を黒板に書かせる。定着度をチェックするためだ。板書した生徒にフィードバックをする際には、単に英文が正しいかどうかということだけでなく、その文を基に生徒と会話する(以下、例)。
生徒「What he made broke easily.」
先生「What did he make? 」
生徒「He made a snowman.」
こうした会話には、テキストにはない英語を使う機会を増やしたいという意図がある。重要なのは、覚えた表現を繰り返し書いたり口に出したりすること。頻繁なアウトプットが英語力の向上・定着につながるというわけだ。
同校の英語Ⅰでは、文法テキストを生徒に持たせているものの、文法を体系的に教える場はない。例えば、関係代名詞は通常1年次の半ばに指導するが、同校では5月にレッスン2で扱う。ただし、扱うのは本文で出てくる主格と目的格のみ。「人+Who+動詞」「物+Which+動詞」を関係代名詞主格の公式として紹介し、それを用いた関係詞節をたくさんつくらせる。次に、その関係詞節を使った文を書かせ、定着を促す。最後に関係代名詞を多用したエッセイを書かせ、定着度を測定する。
「使いながら覚えるのが、本校のスタイル。テキストに出てきたときに、しっかりと使い方を教えることが大切」と松井先生は話す。 |