松井先生が初めてオールイングリッシュの授業に取り組んだのは、49歳のときだった。それまでは難しい入試問題の英文をいかに生徒が理解できるように教えるかに注力して指導し、経験と実績を積み上げてきた。そのため、教師生活の後半戦でこれまでの指導をすべてリセットすることには戸惑いを感じたという。
「私の場合、若いころから趣味でペーパーバックを読んでいたことが役立ちました。通常の授業では使わない表現、難しいことを簡単な表現で述べる技術が自然に身についていたのです。国研の事業指定を受けてからは、雑学的な読み物を読んでユーモアのセンスも磨きました。そして、自分が勉強したことを、どんどん授業で使ってみる。そうした日々の繰り返しが英語力を高め、授業の質の向上につながっているのだと思います」
オールイングリッシュの授業では、教師自身のコミュニケーション能力が問われる。生徒にとっていかに話しやすい相手になれるか。その意味では教師の人間力も試されている。最後に、松井先生に3年次の受験指導に向けた考え方をうかがった。
「大学入試でも従来の英文和訳を課す大学が減ったため、和訳指導より内容理解や自己表現力に重点を置いた指導が求められています。ですから、生徒が2年、3年になっても、生徒に書かせ、考えさせ、話させる授業を自信を持って継続していきたいと思います」 |