特集 組織の中で伸ばす教科指導力

福井県立武生高校

◎福井県武生尋常中学校(1898年設立)等を母体に1948年に開校した伝統校。課外補習を手厚く行うなど、きめ細かい学習指導により、国公立大合格者は例年200名を超える。03年度から4年間、文部科学省のSPP(サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト)に指定された。

設立●高校:1898(明治31)年

形態●全日制・定時制/普通科・理数科/共学

生徒数(1学年)●360名

07年度進路実績●国公立大には、福井大58名、金沢大38名、京都大12名、大阪大14名、名古屋大9名、神戸大8名、筑波大6名など253名が合格。私立大には、早稲田大20名、慶應義塾大11名、立命館大68名など延べ417名が合格。

住所●福井県越前市八幡1-25-15

TEL●0778-22-0690

WEB PAGE●http://www.takefu-
h.ed.jp/


笹岡俊男

▲福井県立武生高校

笹岡俊男

Sasaoka Toshio

教職歴28年目。同校に赴任して2年目。進路指導主事。「自分の力を伸ばして、人のために生かせる人を育てたい」

入羽弘之

▲福井県立武生高校

入羽弘之

Nyuba hiroyuki

教職歴21年目。同校に赴任して11年目。3学年担任。「自分が持っている能力に気づいてほしい」

野坂陽一

▲福井県立武生高校

野坂陽一

Nosaka yoichi

教職歴21年目。同校に赴任して5年目。数学科主任。「生徒が自ら考え、楽しむ授業を心がけたい」

西 繁寿

▲福井県立武生高校

西 繁寿

Nishi Shigehisa

教職歴15年目。同校に赴任して2年目。1学年担任。「1日1日を本気で過ごしてほしい。私もそうしたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【学校事例2:数学】

福井県立武生高校

学年を越えた授業の「タテ持ち」で系統性を高める

1人の教師が複数学年を担当する「タテ持ち」のシステムを導入し、数学科の全教師が生徒全員と向き合う体制を整えている福井県立武生高校。14名の数学教師は、日ごろから学年の枠を越えて議論を交わし、技量を高め合っている。

複数学年の授業を受け持ち3年間を見通して指導する

 武生高校の数学科教師は総勢14名。指導の足並みをそろえ、全教師が全生徒の数学の学力保障に対して責任を持ち、指導力を高めていくスタイルを築き上げている。
 同校の数学指導を象徴しているのは授業の「タテ持ち」だ。多くの学校では教師は同一学年の複数クラスの授業を受け持つが、同校の数学科では1名の教師が複数学年の3クラス以上の授業を受け持つ。担任を受け持つ学年の2クラス、他学年で1クラスと、2学年分を受け持つ教師が多く、3学年全部を担当する教師もいる。特に、07年度は全員が3年生の授業を担当している。「タテ持ち」とした理由を笹岡俊男先生は次のように話す。
 「武生の数学は、数学科の全教師が責任を持って対応しようという方針を実践しているまでです。『タテ持ち』によって、一人ひとりの教師に3年間を見通した系統性のある授業を行うという意識が高まります」
 2003年度からの教育課程の変更も、「タテ持ち」を採り入れた背景の一つだ。3年間持ち上がって初めて3年分の指導内容や大学入試の変化を知るのではなく、最初から全員で新教育課程に向き合うという狙いがあった。1年生と3年生を担当する入羽弘之先生は、「1年生の授業には2年後を意識させるため、3年生に取り組ませる入試問題の中から基礎的な問題を取り入れています。複数学年を受け持つようになって、3年間を見通した授業を組み立てやすくなりました」と話す。
 「タテ持ち」によって教材研究の負担が増えることに対しては「授業ごとに準備が必要なので、確かに時間はとられます。でも、多忙感はそれほど感じません。全教師で生徒に対応しようという責任と使命感を共有できるからでしょうか」と西繁寿先生は話す。
 毎年3月には数学科全員で分担し、難関国立大の入試問題の解答・解説をつくる。笹岡先生は、「生徒にわかりやすく解説することはもちろんですが、できればほかの先生が思いつかない別解を書き加えたいという気持ちで取り組んでいます」と話す。
 同校の「タテ持ち」を象徴的に物語るのが、職員室に質問しに来る生徒の第一声だ。ほとんどの生徒が「数学の先生はいらっしゃいますか?」と言って職員室に入ってくる。だれに質問してもきちんと答えてくれるという安心感が、生徒に根づいているからだ。このような機会は、教師にとって自分の担当でない生徒を通してほかの先生の教え方を知り、自分の指導を振り返るきっかけにもなっている。
 「生徒は教師の教え方を比べています。私たちは常にそれを意識し、指導力を高めていかなければならないと考えています」(笹岡先生)


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