特集 組織の中で伸ばす教科指導力
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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活発な議論と互見授業が日常化

 「タテ持ち」のシステムで重要なことは情報の共有だ。週1回の教科会では各学年の進度を報告し、全学年の状況や前年度との違いなどを確認し合う。模試の結果は過回・過年度・他校との比較や、分野別正答率で分析し、全員で対応を検討する。例えば、07年6月の模試では3年生文系クラスの数列とベクトルの成績が芳しくなかった。
 「数列とベクトル分野は『生徒から難しいという声をよく聞く』と複数の教師の声がありました。議論の末、例年なら全範囲の復習に充てる全員参加の夏休みの課外で、数列とベクトルに重点的に取り組む案が浮上しました。『やるなら夏休みがベスト』と教師全員の考えが一致したからです」(笹岡先生)
 議論を交わす場は教科会だけではない。日常的に職員室に小さな輪ができ、課題や指導法などを話し合う。そこでは、教えるべき内容を教えるべき手法で教えているか、ベテラン教師が若手教師に探りを入れることもある。小さな話し合いから、教科会の議題へと積み上げていくわけだ。
 何でも言い合えるだけに、教科会で意見が噴出することもある。そうした場面ではベテラン教師の一声が方向性を導き出すことも多い。入羽先生は「正誤を議論するだけでなく、大切なのは決定した趣旨に沿って教師一丸となって取り組むこと。決まったことは全員で進めます」と話す。
 2学年理系のチーフは教師歴4年目の若手教師が担当している。同校の数学科は40歳前後の中堅層が厚いが、「経験こそが指導力アップにつながる」という考えから、若手教師も責任あるポジションを担う。その若手教師は、2学年の定期考査の範囲や夏休みの課題などを自分の責任で決めなくてはならない。そのため、日常的に先輩教師へ自分の案を示しながら積極的に相談をして、企画を練り上げていく。野坂陽一先生は、「ただ『教えてください』ではなく、『自分はこう考えていますが、どう思いますか』と聞いてきます。いろいろな先生の教え方を参考にしながら、学年チーフとしての企画力を高めると共に、自分のスタイルを模索しているのでしょう」と話す。
 数学科では互いの授業の見学は一般化している。授業後の黒板をチェックする教師も多い。西先生は「失礼だという雰囲気は一切ありません」と話す。日ごろの議論にも授業見学にも、若手・ベテラン、赴任歴、学年といった垣根はない。若手は先輩に学び、ベテランは自ら築き上げたスタイルを問い続ける。その下支えになっているのは、全教師が全生徒に向き合うという責任感の共有だ。
 「本校はこれからも全員でアイデアを出し合い、切磋琢磨していきたいと考えています」(笹岡先生)


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