特集 組織の中で伸ばす教科指導力
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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考えることの大切さを
「整数」を通して伝える

夏合宿で生徒に「整数」に挑ませたい

  武生高校に赴任して2年目の2007年度、西繁寿先生は1学年担任と数学科1学年チーフを担当した。
 「本校の強みは、教師間に『垣根』がなく、何でも話し合い、自由に議論できる風土があること」
 西先生がそう話すように、職員室ではいつも生徒の情報交換や指導法について話し合いが行われている。そして、生徒のためになると思えば、どんな小さなことでも実行してきた(図1)。

図1

  1年生7月に行った記述模試の結果から「学力上位層が薄い」という課題が浮かび上がった。そこで、「学力上位層の生徒を育てること」を学年の目標と捉え、生徒に「考えることが大切」というメッセージを伝えたいとして、夏休みに行う「チャレンジ合宿」で「整数」を取り上げることを1学年担当のほかの教師に提案した。
 「『整数』は教科書の単元としては独立していません。しかし、難関大の入試には必ずといってよいほど出題されます。数値を代入し、ルールを探し、解法を見つけ出す。小・中学生のような実験的な手法を出発点にアイデアが浮かぶことが多いのが特徴です。公式や定理を当てはめれば解けるというものではないので、考える力を養うのに適切な分野だと考えました」
 具体的には、参考書の章末問題に載っている、不等式で絞り込み、整数解を導き出す問題を中心に指導することを提案した。ところが、ほかの教師から「今の1年生は式の処理が力不足」との指摘を受けた。授業では論理・必要十分条件もまだ取り扱っていないこと、不等式で絞り込む感覚が十分に身についていないことを背景に、「価値あるテーマだが、もう少し数学的な背景を学んだあとできちんと取り組むべきではないか」という結論に至った。
 このように、「タテ持ち」のメリットは、1学年の生徒の状況や指導課題を複数の学年担当が共有しているため、さまざまな角度から建設的な意見が交わされることだ。
 確かに、夏の段階の生徒の学力では、数学的な概念ではなく、感覚だけで取り組むことになってしまう…。これらの意見に西先生も納得し、チャレンジ合宿で整数を扱うことは見送られた。


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