その後、「整数」を取り上げるタイミングが訪れる。1年次で扱う単元が終わり、2年次で扱う証明や命題、因数分解にも取り組み、整数を学ぶための必要な下地がそろった12月の授業で「整数」を指導することになった。今年の1年生は例年より進度が早かったため、次の単元に進むまでに時間の余裕が生まれたこともあと押しした。
1学年担当の教師で話し合った結果、「整数」の授業に3、4時間を充てた。教材は、プリント等をつくらず、問題集や教科書の副教材の中の問題を使用。その問題は式変形の基本にも踏み込んだ内容だった。「なぜそんな式変形をするのか」と疑問を持つ生徒もいたが、「格子点」の説明をしたところ、生徒は図形と式変形がつながる実感を持てたようだという。
「数学が得意な生徒は、教科書にはない、今まで使ったことのない手法に、興味を持って取り組んでいました。数学が苦手な生徒でも『面白そうだけど、解けない』といった様子で、整数に好奇心は抱いたようです」(西先生)
もちろん、この12月の授業だけで考える力がつき、結果が出るものではないと捉えている。しかし、少なくとも数学に対する意識が高まったという手応えを、西先生は感じている。
「生徒はそれまで知らなかった問題へのアプローチ法に接し、別の世界を見る面白さを実感できたと思います。また、難しさを感じて、気が引き締まったかもしれません。6月以降、実施のタイミングを見計らっていたテーマですから、本懐を遂げた思いです。生徒が思った以上にしっかり取り組んでくれたという充実感があります」
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