特集 組織の中で伸ばす教科指導力

福岡県立筑紫丘高校

◎2007年に創立80周年を迎えた。「剛健・叡智・創造」を校訓に掲げ、21世紀の日本を創造するリーダーの育成を目指す。福岡県が推進する「21世紀人材育成推進事業」の中の「ふくおかスーパーハイスクール」の指定を受け、教科指導力の向上などに取り組む。

設立●高校:1927(昭和2)年

形態●全日制/普通科・理数科/共学

生徒数(1学年)●400名

07年度進路実績●国公立大には、東京大9名、京都大12名、大阪大5名、九州大120名、熊本大11名など289名が合格。私立大には、慶應義塾大、早稲田大、同志社大、立命館大、関西学院大など延べ418名が合格。

住所●福岡市南区野間2-13-1

TEL●092-541-4061

WEB PAGE●http://chikushigaoka.
fku.ed.jp/pc/pc.html


佐々木英治

▲福岡県立筑紫丘高校

佐々木英治

Sasaki Eiji

教職歴23年目。同校に赴任して7年目。3学年主任。「1人でもいいので教え子から国文学者を出したい」

新谷 勉

▲福岡県立筑紫丘高校

新谷 勉

Shintani Tsutomu

教職歴22年目。同校に赴任して5年目。3学年理数科担任。「国語を通して、熟慮できる生徒を育てたい」

和田美千代

▲福岡県立筑紫丘高校

和田美千代

Wada Michiyo

教職歴25年目。同校に赴任して5年目。進路指導主事。「自ら人生を切り拓ける力を持つ生徒を育てたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【学校事例3:国語】

福岡県立筑紫丘高校

作問検討会が指導力を高め合う研鑽(さん)の場となる

転任してきた教師が新しい赴任校の指導にいかに早く適応するかは、 多くの学校の共通の課題である。福岡県立筑紫丘高校は、校内模試や定期考査の「作問検討会」を「筑紫丘の指導」をつかむ研修の場として機能させている。

作問検討会は、自校の指導をつかむ絶好の場

 筑紫丘高校は、例年300名近くの国公立大合格者が輩出する県内屈指の進学校であり、他校で15年以上のキャリアを積んできた教師が多く赴任する。個々が高い指導力を持つが、前任校と同校では、生徒の学力レベルに差のある場合が少なくない。
 こうしたギャップは、通常、授業をしながら生徒の気質や学力を把握して埋めていくが、同校ではできるだけ早く「筑紫丘の指導」に慣れてもらうために、毎年6、10月に行う「研究授業」を活用する。研究授業は全教科で行われるが、国語科ではその年に赴任した教師に担当してもらうようにしている。3学年主任の佐々木英治先生は次のように話す。
 「生徒が評論文などの難しい文章を読めるようになるにはある程度教え込む指導も必要ですが、教え込むと生徒の意欲を削ぐことがあります。本校の生徒は総じてモチベーションが高いので、難解なテキストを読み取る醍醐味を味わい、生徒が考える機会を多く設ける、といった指導が求められます。本校にふさわしい指導ができるよう指導のレベルを高めていくのが、研究授業の役割です」
 国語科の教師全員で転任者の授業を参観し、検討会で気づいた点や注意すべきポイントを指摘し合う。その上で、実際の授業を通して生徒の学力や気質を肌で感じ取り、同校の生徒に合った指導を模索していく。
 校内模試や定期考査の作問検討会も、転任してきた教師が「筑紫丘の指導」をつかむ絶好の場だ。校内模試は国語科全員で試験の1か月前に数日間かけて、定期考査は学年ごとに、作問検討会を開く。大問ごとに設問担当者を割り振っているが、その問題・解答の妥当性や客観性について検討する。ほかの教師の指摘からレベルの設定について把握し、自校の生徒の力を測るのに適した作問の方法を体得していく。
 ときには作品の解釈について熱く議論することもある。進路指導主事の和田美千代先生は次のように話す。
 「3年次2学期の中間考査で森鴎外の『舞姫』を出題しました。検討会では、主人公の豊太郎はいつ日本への帰国を決意したのか、家庭生活だけでは満たされない自己実現の欲求があったのではないかといったテーマで考えを述べ合いました。こうした議論を通して、私たち自身の読みも深くなり、作問レベルだけでなく、それが授業の質を高めることにもつながるのだと思います」
 「作品には毎回新たな発見がある」と、3学年担任の新谷勉先生は次のように話す。
 「私たちが作品を楽しめば、授業を通して生徒に読みの奥深さを伝えることにつながります。『舞姫』についても、私が20代のころと比べ解釈が深くなっていることに気づきました。生徒にも10年後、20年後に高校で扱った作品に再び触れてほしいと常々話しています」


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