「中世の軍記物の出題は1年次の『平家物語』の『木曾の最期』以来でした。『義経記』を選んだ理由は、入試も近い第3回の模試で、改めて軍記物の存在を思い出してほしかったから」と佐々木先生は話す。
作問時の留意点の一つは、時期や生徒の習熟度にふさわしいレベルに設定することだ。例えば、傍線G(問5)。弁慶は「彼奴が候はん方に弁慶向かひて、見参に入れ候はんずる(あいつがいるところにこの弁慶が出向いて、からめ取ってお目にかけましょう)」と言っているが、本当に土佐坊を撃退する自信があったのか。また、傍線部Cの「名乗らで過ちせられ候ふな(名乗らないでけがをされるなよ)」は、弁慶がわざと名乗らずにふざけて義経に近寄っていく場面だが、ここでは「過ち」の意味が読みとれるかどうかを出題した(問4)。
「『義経記』は言葉や表現自体は難しくはありませんが、中世の軍記物特有の世界観があります。義経や弁慶の言動や行動の背後には、武士の矜持、主従の絆など、さまざまな要素が読みとれます。3回目の模試なので、言葉を単に単語や文法に置き換えるだけではなく、場面の背後にある世界まで読みとって記述できる力を身につけさせたいと考えました」(佐々木先生) |