特集 組織の中で伸ばす教科指導力

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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仕上げは国語科全体で討論

 教師個々が作った問題を練り上げる場が、1~3年次の国語科教師全員が参加する作問検討会だ(写真)。生徒の力を測る作問や解答になっているか、客観性は確保されているかを2日間ほどかけて検討。問1から順番に、作成者が司会をしながら「複数の解釈が考えられるので、ここは選択で問うた方がよい」「今の生徒の実力を考えると、ここは書き下し文がよいのではないか」といった意見を交わす。

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写真 校内模試の作問検討会では、国語科教師10名全員で2日ほどかけ、問題・解答の妥当性について意見を交わす。他学年担当の教師にとっても、3年生の現状を知るよい機会だ

 「『主観』を『客観』にしていくのが検討会の意義。国語は、教師によって読み癖もありますし、主観が入っていることもあります。主観を削り落とし、だれが見ても妥当と思われる設問と解答に練り上げていくのが、作問検討会の目的です」(新谷先生)
 校内模試は、200点満点で平均点が100~120点となるように作成。生徒の解答パターンも予想した上で、どこまでを正解として許容するか、どのレベルであれば部分点を与えるのかといったことも詰めておく。
 これらの議論が、転任教師のスキルアップにつながる。作問のポイントや問題の量や配置など、検討会を通して多くの示唆を得ることで、作問技術の向上、日々の授業の充実につなげていくのである。
 校内模試の翌日には、模範解答と解説を配る。間を置かず生徒に振り返らせることで、自分の弱点はどこかを把握させるのが目的だ。採点は、全10クラス分の、自分が作問した問題のみを担当することによって、公平性を確保している。
 第3回の古文の問題からは、次のような課題が浮かび上がった。比較的高レベルの問4のCは多くの生徒が正解していたが、「もぞ・もこそ」の用法を問う問4のEの正答率が予想外に低かったのである。
 「単に『射そこなうことがあっては大変だとお思いになって』と訳せばよいのに、深読みしたのか、ほとんどの生徒が書けませんでした。この用法は2年次の『源氏物語』以来扱っていなかったため、生徒の中で抜け落ちていたようです。この結果は残念でしたが、生徒の現実がわかり、3年次のこの段階で基礎・基本に立ち返ることの大切さを意識させることができたのは、大きな収穫でした」(新谷先生)
 生徒の実情を知る教師によって考え抜かれた問題を、更に国語科全体で練り上げる。生徒に弱点克服のための指針を与えると同時に、教師にとって的確な生徒把握につながるといえるだろう。


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