私は脳の働きに着目し、長年、運動能力の解明を進めてきました。最近、研究していることをお話します。
運動は脳の機能を活発化させることが知られています。しかし、どの程度の強さの運動が脳の認知能力に最良の影響を及ぼすのかはわかっていませんでした。そこで被験者にさまざまな条件下で運動をしてもらい、脳の動きを測定し、オッドボール課題(※2)で認知能力の変化を調べました。
その結果、被験者の最大酸素摂取量の60%程度の運動を30分間続けると、脳内にβ-エンドルフィン(※3)という物質が大量に分泌されて快感を覚え、運動後には見たり聞いたりする能力が最も高まることがわかりました。一般成人であれば、ごく軽いジョギングや、円陣を組んでバレーボールのトスを回すのと同程度の運動です。 |