運動生理学の研究は、トップアスリートのトレーニング法の開発にも役立てられています。マラソン選手がよく取り入れている高地トレーニング(※5)は、身体にどのような影響を及ぼしているのかを科学的に解明し、より効果的な練習法を開発します。
アメリカのトップアスリートには、スポーツサイエンスの専門家が専属でアドバイスをしているのが一般的です。一方、日本ではまだ経験や勘に頼ったトレーニングが多いのが現状ですが、徐々に科学的な知見を取り入れる流れが生まれています。今後はますます運動生理学が重視されていくでしょう。
運動は、心の状態も大きく左右します。近年、すぐキレる若者や引きこもりなど、若い世代の心の問題がクローズアップされています。幼少時代からの運動不足により健全な身体感覚が欠如していることが原因ではないかと、私は推測しています。そうした因果関係を突き止めるのは、今後の課題です。
身体の研究から人間の本質に迫る。それが運動生理学の醍醐味といえるでしょう。そして、その研究成果から適切な運動の指針を示すなどして、人の健康を守り、元気を与える。そのような大きな目標を胸に抱き、研究に邁(まい)進する毎日です。 |