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それなりの成果は上がったのですが、突破できない壁もあり、「どうすればこの状況を変えられるのか」と悩んでいたときに、校長として札幌北高校に赴任してこられたのが、武田哲先生でした。
武田先生は生徒に繰り返し「東大へ行こうよ」と呼びかけました。始業式や終業式―、事あるごとに「きみたちには東大に行けるだけの力があるのだから、自分のやりたいことを目指そう」と説かれました。校長自らが語りかける言葉は、生徒にどれだけの気づきを与え、勇気づけたことでしょう。生徒は道外の大学にも目を向け始め、道外大学志望者が倍増していったのです。
「生徒が変われば、学校が変わる」とはまさにこのことだと思います。進路指導部に限らず「新しいことに挑戦しよう」という空気が生まれてきたのです。進路指導部は、まず3年間を見据えた進路学習を体系化し、大学見学や職場訪問などの体験活動を次々と実現させ、生徒の将来を見据えた進路指導を定着させようとしました。
学年団と進路指導部の教師が全員集まる学力検討会が深みを増したのもこのころです。毎回、いろいろなタイプの生徒を10名ほど取り上げ、「この生徒のこの弱点を克服し、学力を伸ばすためにはどのような指導がよいのか」「この生徒にはどのような言葉をかけたら、やる気を出すだろうか」といったことを話し合いました。
教師個々の考え方は当然、違います。意見がぶつかり合い、議論が深夜にまで及んだこともあります。しかし、生徒を思う気持ちは、皆同じだとわかっていましたから、少しも苦になりませんでした。そうした議論を繰り返すうちに、だんだんと生徒一人ひとりに目を向ける意識が浸透していき、今の北高の指導へとつながっていったのです。
生徒は、教師が向き合えば向き合った分だけ応えてくれます。武田校長は、運動部の試合にもよく応援にいらしていました。生徒は、地区大会に校長先生が見に来ると思ってもいませんから、驚くと同時に本当に嬉しそうな顔をします。更に「応援しているぞ」と言われた生徒たちは、120%の力を出して頑張っていました。
私は、クラスの生徒はもちろん、教科を教えている生徒、学年主任のときは学年全員の生徒の顔と名前を必ず覚えました。成績や希望進路、部活動を知っていれば、ちょっとした変化にも気づいて生徒に話しかけられます。前の試験が50点だった生徒が60点に上がったとき、「よく頑張ったね」と立ち話でもすれば、次は70点を取ってきます。もし次の点数が悪かったとしても「ごめんね」とわざわざ言ってきます。教師のちょっとした一言が生徒を勇気づけ、笑顔になって返ってくる。それは教師冥利に尽きると思うのです。 |
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