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先輩教師の言葉
生徒への思いが
教師の新たな活力となった
元・北海道札幌北高校校長 Takeda AKIRA
武田哲
私は北海道の数校で校長を務めましたが、どの学校でも「東大へ行こうよ」というメッセージを生徒に伝えてきました。東京大に行くことが特別なことではなく、「自分のやりたいことができる大学を目指す」という意識を持ってほしかったからです。当時の北海道の生徒や教師は、それだけ全国に目を向けていなかった。「全国」の象徴が「東大」だったわけです。
学校を変えたいと思っていましたが、その考えを先生方に直接は話しませんでした。学校を動かしているのは、教師ではなく「生徒」です。私は生徒に直接語りかけました。周囲が何を言っても、生徒自身が変わりたいと思わなければ変わりようがありません。でも、生徒が変われば、学校も教師も変わるのです。
玉田先生は、私のそうした思いをしっかり受け止め、強い意思で札幌北高校の進路指導を変えていきました。体験的な進路学習をはじめ、当時は珍しかった国立大見学を北海道大にかけ合って実現させました。この働きかけは、のちに北海道大がオープンキャンパスを開くきっかけになったと聞いています。
学力中心の「進学指導」から生徒の将来を重んじた「進路指導」への転換には、さまざまな壁があったと思います。しかし、玉田先生は粘り強く周囲に働きかけると同時に、無理だと思ったら別の角度から攻める柔軟性を併せ持ち、確実に学校を変えていった先生でした。
退職後しばらくして、玉田先生から「北海道の進学校の進路指導担当が集まって自主勉強会を立ち上げるので、顧問をお願いしたい」という話を受けたときは、期待に胸膨らませました。北海道の高校教育の「これから」を考える教師が行動を起こし始めたと。生徒のためにどのような進路指導の工夫ができるのかを議論する中で、教師が刺激を受け、ひいては活力となっていきました。その会に参加していた教師は、今、各校で活躍されています。その活力が生徒の心に火をつけ、教師を、そして学校をも変えていくのです。
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