特集 生徒の未来、教師の役割
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 4/17 前ページ  次ページ

受験が学習の動機付けになりえない時代に

 生徒数の減少がもたらしたもう一つの変化として、「脱受験競争時代」に突入したことが挙げられます。
 子どもは受験プレッシャーから解放され、選り好みさえしなければ大学に入れる状況になりつつあります。また、推薦・AO入試による入学者は、全体の約4割に達しました。特にAO入試では約9割が高校の評定平均値を出願要件にしておらず、学力検査を課す選抜は全体の4%弱しかありません(図3)。一部の難関大を除いて、もはや大学受験は学習の動機付けにはなり得ない状況になりつつあるのです。

図3

 事実、学習習慣のない子どもが増えており、特に成績中位層以下は深刻な状況にあります。ベネッセ教育研究開発センターの「学習基本調査」によれば、高校生の平日の家庭学習時間は、90年に平均約90分だったものが、06年には約70分と大きく減少しました(図4)。小中学生を含め、高校生は最も勉強しない年代となったといえるでしょう。
 大学受験が動機付けにならない以上、何らかの方法で生徒のモチベーションを喚起する必要があります。例えば、生徒の進路に応じて柔軟に学科やコースを組んだり、教育課程を工夫したりといった都道府県レベルでの高校再編を進め、外発的な動機付けを喚起することも一つの方法です。
 個々の学校の管理職がリーダーシップを取り、校内の授業形態を工夫する努力も必要でしょう。例えば、調べ学習や活用を重視した授業を行うために少人数のゼミ型式の授業を取り入れる。生徒自身がテーマを決め、試行錯誤しながらまとめていくことで、自ら課題を見つけ、解決する力を身につけられます。自分で決めたテーマだからやりがいも生まれ、調べるうちにいろいろなことが見えてくるようになり、新たな興味・関心につながるかもしれません。これは、大学で伸びる生徒を育成する上でも有効です。
 もちろん、現行の授業時数や教員数でこうした少人数指導を行うのは難しいでしょう。そこで、一斉講義型の授業は複数のクラスをまとめて大教室で行い、負担が軽くなった分を少人数指導に充てるといった方法も考えられます。固定観念を捨てて、大胆に授業形態を改編する決断と実行力が求められているのです。

図4
*高校生の偏差値は進研模試のデータを使用
出典/ベネッセ教育研究開発センター「第4回学習基本調査

  PAGE 4/17 前ページ 次ページ