高校教育の質を高めることは、個々の教師や学校の努力だけでは限界があります。公教育の質をどのように保証していくのかというマクロな仕組みも必要です。これまで事実上、日本の高校の質保証のメカニズムとして機能してきたのは、「大学入試」と「学習指導要領」の二つでした。しかし、大学入試は一部の難関大を除いて、もはや質保証の仕組みとしてはうまく機能していません。学習指導要領に至っては、大学入試の方がよほど高校に対する影響力が大きいことが、06年に発覚した必修科目の履修漏れ問題から見えてきました。どのように高校教育の質を保証するのかというのは、教育政策上の喫緊の課題なのです。
小・中学校については、全国学力・学習状況調査が導入され、結果的に質保証の仕組みとして機能し始めています。大学では、OECDが国際的な質保証テストについての構想を持っています。しかし、高校には、そうした質保証の仕組みがありません(図5)。国際的に見ると、国家試験のような形で卒業資格を与える国が多い中、日本は学校長が履修単位を認定して、卒業を認定する仕組みになっています。教育の質を保証する仕組みがないまま、子どもの学力低下が進めば、高校教育の水準が低下する恐れもあります。 |