もちろん、「高大接続テスト」には大学側の強い要望もあります。推薦入試・AO入試の普及により、学科試験を受けずに大学に入学する学生が増えています。特に、私立大の場合は、一般入試においても科目数が限定される傾向にあり、少なくとも必修科目については一定のレベルにあるという保証が必要であるという事情があります。テストの結果を、大学の受験資格にしたり、就職選抜の判断材料にしたりすることで、推薦入試・AO入試の欠点を補う有効な手段になり得るとの期待があることは確かです。
こうしたテストが導入されると、「受験生の負担が重くなる」「多様な高校がある中で、共通の試験を課すのは無理」と考える方がいるかもしれません。しかし、学力や進路に応じて高等学校制度を複数に分割するわけにはいきません。同じ高校卒業者として共通に担保すべき質を保証する仕組みをつくらなければ、国際的にも通用しない学歴になってしまうでしょう。
後期中等教育の難しさは、一定レベルの知識・技術を共通に身につけさせると同時に、卒業後、さまざまな領域で活躍することを前提とした分化の働きをも同時に果たさなければならないことです。エリート教育から大衆化していく過程においては、多様化が重要な課題でした。しかし、98%の子どもが高校に進学する現在、多様化は極限まで進みました。いかに共通性と多様性のバランスをとっていくか、高校生に必要な学力とは何かということを改めて考えなければならない時代が来ているのです。 |