指導変革の軌跡 福岡県立城南高校「時代に応じたキャリア教育の再構築」
福岡県立城南高校

福岡県立城南高校

◎1964年創立。一般コースと理数コースを設置。「進取 明朗 端正」を校訓とし、人としての在り方生き方を真摯に探求する姿勢を有し、強靭な知性と豊かな情操、健康な心身の陶冶に努め広く社会への貢献を志す有為な人材の育成を目指す。陸上競技部、書道部、放送部、和太鼓部など、全国レベルの活躍を見せる部も多い。

設立●1964(昭和39)

形態●全日制/普通科/共学

生徒数(1学年)●約400名

07年度進路実績●国公立大には、京都大、大阪大、九州大、北海道大、筑波大、お茶の水女子大、広島大、熊本大、鹿児島大など197名が合格。私立大には、西南学院大、福岡大をはじめ、早稲田大、慶應義塾大、東京理科大、同志社大、関西学院大、産業医科大など、延べ660名が合格。

住所●〒814-0111 福岡市城南区茶山6-21-1

TEL●092-831-0986

WEB PAGE●http://jonan.fku.ed.jp
-h.spec.ed.jp/top.htm


下田浩一

▲福岡県立城南高校

下田浩一

Shimoda Koichi

教師歴25年目。同校に赴任して3年目。第1学年主任。「生徒には自立し、他者に貢献できる人間になってもらいたい」

跡部弘美

▲福岡県立城南高校

跡部弘美

Atobe Hiromi

教師歴23年目。同校に赴任して4年目。「周囲の人との関係を大切にしながら、自分を生かしきることができる生徒を育てたい」

池内一誠

▲福岡県立城南高校

池内一誠

Ikeuchi Issei

教師歴16年目。同校に赴任して1年目。「生徒には、まず当たり前のことが当たり前にできる人間であってほしい」


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指導変革の軌跡100


福岡県立城南高校「時代に応じたキャリア教育の再構築」

生徒気質の変化を踏まえて「ドリカムプラン」の見直しに挑む

● 実践のポイント
生徒気質の変化を分析して実情に合った取り組みへと再構築に着手
職業マッチング指導から「働くとは何か」を問う指導へ
授業、部活動、行事、そして「ドリカム」にバランス良く取り組める環境を実現

「ドリカム」と「今の生徒」との間に生まれたギャップ

 1995年度から福岡県立城南高校で始まった「ドリカムプラン」は、全国の高校の進路指導の在り方に多大な影響を与えてきた。「将来何になりたいのか」「進学してどのようなことを学びたいのか」を、多様な体験的進路学習を通して生徒が考え、かなえるべき夢の発見を学習のモチベーションへと変えていくその指導は、「生き方指導としての進路指導」と注目を集め、それぞれの学校が自校に合った進路指導計画を構築していく際の重要な指針・モデルの一つとなった。小誌でも、「ドリカム」開始当初から同校を取材、その取り組みの内容を紹介してきた(小誌02年9月号など)。
 それから十余年。「ドリカム」は多種多様な活動を包含しながら修正や改善を重ねてきた。だが、長い時間をかけてたどり着いたその形と、城南高校の生徒と教師の「現状」の間には、少しずつギャップも発生していた。05年度に同校に赴任した下田浩一先生は、「ドリカム」誕生時から現在までの高校を取り巻く教育環境の変化を次のように説明する。
 「例えば、生徒気質の変化です。『ドリカム』は94年度からの新課程生に対応するため確立されました。当時の新課程生は、自己主張ができ、自己発信力があるが、その一方で、基礎知識が不足している、暗記に価値を見いだそうとしない…などの特徴を持ち、『ドリカム』の取り組みは、そうした生徒気質の長所・短所を踏まえたものでした。そして今、私たちが対峙している03年度からの新課程生は、更に高校入学までの塾中心の学習習慣が定着して、自分で学ぶことが苦手、自分に合わないと思ったことに対してはとても消極的、といった特徴が顕著に見られるようになりました」

夢の実現の土台となる学力が揺らぎ始めた

 下田先生は更に「高校入学までの学習の履歴も、大きく変化した」と指摘する。
 「近年、中学校では関心を持った職業について調べたり、自分が就きたい職業の職場を訪問したりするなどの活動が活発に実施されるようになりました。『ドリカム』導入当時は、『10年後、20年後の自分』など、中・長期的視点で将来を考えた経験がなかった生徒も多かったはずですが、今ではほとんどの生徒が多様な活動を通して高校入学までに『将来何になりたいのか』について考えてきています」
 こうした生徒の質的変化への抜本的な対応が、『ドリカム』に求められているのではないか、と同校の多くの教師が日々感じるようになっていた。そしてその思いは、同校の大学合格実績が、近年、下降傾向を示すようになったことで明確な危機感へと変わっていった。
 「『ドリカム』では、生徒は興味・関心に応じて校内外で体験的活動を展開します。そのため、一時的に生徒の家庭学習の時間が減ってしまうこともあります。しかし、活動で得たものを学習のモチベーションへと変え、学習の遅れも取り戻し、成績を伸ばしていくのが、以前の生徒たちの姿でした。ところが最近は、中学校で体験学習を経験していることもあり、『ドリカム』が学習のモチベーションへと結び付きにくくなっています。更に、自立した家庭学習習慣が身についていないため、学習の遅れを自ら取り戻すことが難しくなってきているのです。生徒に夢を持たせるのはもちろん大切ですが、夢の実現の土台となる学習習慣の定着、学力の向上に、これまで以上に手厚く取り組む必要があると感じるようになりました」(跡部弘美先生)


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