05年、同校は福岡県教育委員会からキャリア教育領域での研究指定校の委託を受ける。これを契機として、より生徒の実情にフィットした活動への深化を目指して、『ドリカム』を再構築する作業が始まった。まず、全教師と生徒へアンケートを実施し、『ドリカム』の問題点を分析。その結果、大きく二つの視点での見直しが図られることになった。その一つが、「城南高校で行うべきキャリア教育の定義」だ。
「これまでの『ドリカム』の活動は、生徒と大学、職業のマッチングを重視したものでした。しかし、中学校で既にマッチング指導が盛んに行われている今、高校で行うべきはマッチング指導の上位概念としての『将来に向けしっかり働き、しっかり生きていける自分づくり』の教育だと私たちは考えました」(下田先生)
中学校での指導で、高校入学時に「就きたい職業」を挙げられる生徒は多い。それ自体は良いことであるが、逆に「安易に選択した職業に固執し、視野を狭めてしまっている生徒」の存在が気になるようになったという。
「就きたい職業を見つけていてもそれ以外の世界にも目を向けてほしいし、職業が見つかっていなくても焦ることはない。『なんとなくこの学問に興味がある』という進路選択でもよいはずです。それなのに、いつしか『就きたい職業を見つけていなければならない』と思い込み、見つからないことに苦しむ生徒も見受けられるようになりました。今の自分と将来とのマッチングだけにこだわらず、視野を広く持たせ、社会の中で働くとは何か、そこにはどんな喜びや苦しみがあるのか、より哲学的に考察することが、今の生徒には必要だと思いました」(跡部先生)
保護者や地元財界人を招いた講演会などでは、仕事の詳細よりも「社会の中で働くことの楽しさ・苦しさ」を中心に話してもらうようにした。
「好きなことだけをするのが仕事ではないということに気づいた生徒も多くいたようで、中学校までの職業講演会とは違った感動を味わったという感想が多かったですね」(池内一誠先生)
更に「今の城南高校のキャリア教育」について校内で討議を重ねた結果、たどり着いたのが「学校におけるすべての活動がキャリア教育である」という考えだった。授業やHR、面談などの日常的なかかわりの中で、「社会の中で生きる」とはどういうことなのか、もっと生徒に問いかけるべきではないかと話し合った。
「例えば、提出物をなぜ期限内に出さなければならないのか。それは高校内だけの約束ではなく、社会に出てからも求められることを生徒に説明できたとき、教室と社会はつながります。学校活動のすべてがキャリア教育であるということがわかったとき、進路指導は〝仕掛け〟をつくることではないのだと理解できました」(池内先生)
「もしかしたら、生徒も教師も『ドリカム』さえやっていればなんとかなると、『ドリカム』に甘えていたのかもしれません。基本的な生活習慣の確立や教科学習、集団活動があって初めて、『ドリカム』は真価を発揮するのではないでしょうか」(下田先生)
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