指導変革の軌跡 福岡県立城南高校「時代に応じたキャリア教育の再構築」
VIEW21[高校版] 新しい時代に応じたキャリア教育の再構築のパートナー
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全員一斉から個々の成長に応じた指導へ

 「ドリカム」見直しのもう一つの視点は、取り組みの肥大化の解消であった。
 1年次には職業インタビューや職業講演会、2年次には大学教員による学問講座、同じ志望学部の生徒が共同で行う課題研究、更にディベート大会、小論文コンクールなど、多彩な取り組みは「ドリカム」の特徴であり、毎年のように新しい取り組みが加えられていった。更に、元々は理数コースの必須単位であった「課題研究」が、2年生全員対象となるなど、いつしか教師・生徒双方にとって活動の負担は大きなものとなっていった。そのため、「特に私のように新たに赴任してきた教師から見ると、なぜこのタイミングにこれだけの活動を行うのか、疑問に思うものも存在している」(池内先生)状況であった。
 「『ドリカム』開始当初は、課外活動の時間を中心に、必要な生徒が適切なタイミングで活動に取り組んでいました。しかし、『総合的な学習の時間』の導入で、ほぼ毎週、全員が活動に取り組むことになったのです」(下田先生)
 生徒一人ひとりの進路意識醸成のスピードは当然異なる。事実、全員対象となった近年の課題研究では、取り組みに消極的な生徒やインターネットで集めた情報を並べるだけのような生徒も目立つようになっていた。そのため、「全員に同じタイミングで夢を描くことを求めてしまっていたのかもしれない」(跡部先生)という反省の声が教師から上がってきた。そこで、全員が知っておくべき進路に関する情報と、個々が進路意識の醸成に応じて活動することで知り得る情報とを明確に分けることで、活動全体のスリム化を検討していった。その結果、職業インタビュー、課題研究、小論文コンクールといった活動は、推薦・AO入試志願者など、その活動を希望する生徒への個別指導へと変更した。そして「ドリカム」の活動は「総合的な学習の時間」内に集約された()。

図

 「『ドリカム』に時間が割かれる分、生徒一人ひとりに向き合う時間が圧迫されることもありましたが、スリム化によって、面談や学習課題のチェックを通して勉強の仕方を教えたり、授業研究したりする時間をこれまで以上に確保できるようになりました。生徒も教師も、一番大切にすべき時間はいうまでもなく授業です。生徒も十分な準備をして授業に臨み、そして部活動や行事、『ドリカム』にバランスよく取り組めるようになってきたと思います」(跡部先生)


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