より効果的に指導力向上につなげようと、担当者の割り振りにも工夫を凝らす。数学科と国語科では、東京大などの難関大を若手教師に担当させる。特に国語科では、評論や小説といった解答・解説を書くのが難しい分野も若手教師の担当となる。担当になった教師は、過年度の『大学入試問題研究』を熟読して先輩教師の解説を参考にしながら、より質の高い解説文の作成に挑む。もちろん初めからうまく書けるわけではない。自分の解説をベテラン教師に見せて、積極的にアドバイスを求める教師もいる。
「私が本校に赴任して初めて『大学入試問題研究』を見たとき、解説のレベルの高さに衝撃を受けました。そうしたスキルを持つ先生と同じ教壇に立つことがプレッシャーだった時期もありましたが、だからこそ先輩に追いつきたい一心で必死に勉強したのだと思います。今の若い先生も、ベテランから受ける刺激を土台として成長してほしいですね」と、渡辺先生は話す。
『大学入試問題研究』は1校当たりの問題数を増やし、内容の改善も図っている。
「以前は入試問題を解いて解説を加えることだけに力を入れ、本校の生徒に合った解答・解説を書くという視点が欠けていました。今は、より本校の生徒の実態に応じた解説を書くように心がけています」(半谷先生)
例えば、国語の作文では次のような点に留意する。
「市販の過去問題集の模範解答はすばらしいのですが、高校生が限られた時間の中で書き上げるレベルを超えています。練りに練られた隙のない文章ばかりを見せられていては、生徒は自信をなくしてしまいます。実際にはどのようなレベルの文章であれば合格ラインに達するのかを考えながら、本校の生徒が書ける模範解答をつくるように心がけています」(渡辺先生)
生徒の学力に見合った解答・解説とすることで、「これなら自分にもできるようになるかもしれない」と思わせ、より高い志望を持たせることも『大学入試問題研究』の目的なのだ。
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