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高い目標設定が教師の気持ちを奮い立たせた
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事業計画の策定にあたり、実習計画は大幅に改訂された。そのため当初は、特に負担の大きい専門担当者の中に難色を示す教師も少なくなかった。このような消極的な流れを押し切ってまで推進した背景には、専門高校を取り巻く厳しい現状がある。 木先生は「全国の水産・海洋系高校は、少子化や普通科志向により統廃合が続いています。専門高校として生き残っていくためには、専門教科の教師が力を発揮することが不可欠。取り組みを通して、教師に意識改革を迫ることも狙いの一つでした」と話す。
個々の取り組みにあえて厳しい目標を設定したのもそのためだ。トラフグ養殖やヒトデのたい肥化などの新分野は、教師にとっても大きな挑戦だった。従来、扱ってきた新巻鮭やその他実習製品も、販売目標額を一気に倍近く引き上げるなど、高い数値目標を課した。今回初めて地元企業の協力を得て、校外での販売活動を実施し、自分で作った製品や接客態度などを世に問う緊張感を感じさせた。
「新分野への挑戦や地域から注目を集めることで、教師にも自らの指導力を高めなければならない気持ちを培ってほしかった。半ば強引に始めた面もありましたが、それが逆に教師の気持ちを奮い立たせたと思います」(上林先生)
事業開始から1年、教師の意識改革は顕著だ。私費で研究会に参加する教師や指導方法について見直そうとする教師が増えた。「こんなことを試したい」「こういうことが可能かもしれない」といった教師同士の会話も増えたという。
教師以上に変わったのは、生徒の意識だろう。例年、入学時に半数以上の生徒が就職希望だが、07年度の3年生は6割近くが進学を希望し、多くの生徒が志望校に合格した。研究活動を機に、志望学部を文系から研究に関連した学部に変えるなど、目的を持って大学に進む生徒も増えた。 |
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学習や研究成果の発信、地元との連携などにより、地域における同校の存在感が高まったことも大きな成果だ。水産・食品関係の企業や関連機関からの共同研究の依頼や、宮津市からも特産物やブランド品について、連携の依頼が増えた。「地域との連携が、本校の価値を高めることにつながっている」と上林先生は話す。また、同校の活躍がたびたび新聞やテレビ番組(新聞掲載74回、テレビ放映12回)で取り上げられ、生徒の自信や学校に対する誇りを生んでいる。
今後の課題は、研究や実習を通して高めた意欲を、教科学習に結び付けていくことだ。模試の成績が上向き、結果的に進学実績が向上しているが、主体的な学びにまでは至っていないという。「プロフェッショナル・アイズの取り組みの趣旨が生徒に浸透していないことも原因の一つ。アナウンスを徹底して、生徒と目標を共有していきたい」と 木先生は意欲的だ。
従来からある学校の特色や教育資産を生かし、短期間で変貌を遂げた海洋高校。改革の芽は内部にあるとの意識を持って、自校の特色や強みを見直す大切さを教えてくれる事例といえる。 |
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