図1は、高校生と大学生の価値観・行動規範の特徴を示したデータである。
自我の確立を測る指標のうち、「A自己主張」「B自己肯定」の肯定度の数値に比べて、「C自信」「D自立性」「E目標設定」の肯定度の数値は相対的に低い結果となっている。特に、「C自信」は高校生より大学生になると数値が若干伸びるものの、数値の低さが目立つ。自信を持っているのは、大学生になっても4人に1人しかいないという計算だ。自分自身を信じ、達成感や肯定感を得やすい傾向は大学生の方が高くなるが、「自分らしさに基づいて物事に挑戦する力が弱い」という特徴がうかがえる。
一方、社会性の確立を測る指標のうち、「A協調性」「B積極性」「C社交的態度」は相対的に高い数値を示しているが、「D社会貢献」「E対処性」「F役割遂行」といった他者や社会に働きかける力の肯定度が特に高校生で低い。
これらの結果から考えると、今の高校生・大学生は、居心地のよい対人関係を築くことは上手だが、他者や社会に働きかける力は弱いといえそうだ。近年、自立できない高校生が増えている一因は、ここにあるのではないだろうか。人間は対人関係の中で生き、生かされている存在である。ところが今の子どもは、他者と接する場面が少なく、人から学んだり人を敬ったりしたという体験に乏しい。
こうした状況は、自分に自信を持てない高校生・大学生が増えているといという前掲のデータとも無関係ではない。達成感や自己肯定感が低いのは、他人に認めてもらった経験が乏しいことの表れでもある。「他者に認められたい」という欲求は、人間の根源的な欲求の一つだ。しかし、人に認めてもらうには、他者に対して働きかけなくてはならない。働きかける力が弱いために、まわりの人から認められているとは思えず、悶々(もんもん)としている高校生・大学生が多いのではないか。 |