特集 「自立する高校生」をどう育てるのか
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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■ 高校・大学生のキャリア観
私的価値を重視する傾向は 社会との関係を閉ざすことに

 「今の青少年は私的な価値の追求を重視している」とよくいわれる。学習後に得られるものがなければ、あるいは得られるものが見えなければ、学習に向かわない傾向が強い。この功利的な価値観も、自立の問題と無関係ではない。

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図2
*高校生のデータは、ベネッセ教育研究開発センター「確かな学力の育成をめぐる課題と展望」(08年5月刊)により作図

 図2は、高校生・大学生のキャリア観を示したデータである。「B功利的学び志向」の肯定率は高校生・大学生共に高く、学びに積極的な姿勢が見える。ところが、「D私的価値追求志向」の肯定率も同様に高く、「功利的な価値観」が強く働いていることを端的に表している。
 つまり、Bの「実社会で役立つ学び」「興味ある事の学び」については、私的価値追求の側面から選んでいると考えられる。自分の好みだけを行動の価値基準とすることは、他者や社会との関係を狭め、自立に通じる道を自ら閉ざしているともいえよう。
 フランスの詩人ポール・ヴァレリーは次のように言っている。「人は他者と意思の伝達が図れる限りにおいてしか、自分自身とも通じ合うことができない」。他者との関係を上手に築けない人は、自分自身への問いかけもうまくいかないということだ。
 学習に向かうためには、「やればできる」という自信が必要である。しかし、自分としか通じ合えない子どもは、「小さな繭(まゆ)」の中で自分探しをしてしまうために、すぐに壁にぶつかり「できない自分」にたどり着く。いったん否定的な自己イメージが形成されてしまうと、自律的に学びに向かいにくくなるといえる。


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