図2は、高校生・大学生のキャリア観を示したデータである。「B功利的学び志向」の肯定率は高校生・大学生共に高く、学びに積極的な姿勢が見える。ところが、「D私的価値追求志向」の肯定率も同様に高く、「功利的な価値観」が強く働いていることを端的に表している。
つまり、Bの「実社会で役立つ学び」「興味ある事の学び」については、私的価値追求の側面から選んでいると考えられる。自分の好みだけを行動の価値基準とすることは、他者や社会との関係を狭め、自立に通じる道を自ら閉ざしているともいえよう。
フランスの詩人ポール・ヴァレリーは次のように言っている。「人は他者と意思の伝達が図れる限りにおいてしか、自分自身とも通じ合うことができない」。他者との関係を上手に築けない人は、自分自身への問いかけもうまくいかないということだ。
学習に向かうためには、「やればできる」という自信が必要である。しかし、自分としか通じ合えない子どもは、「小さな繭(まゆ)」の中で自分探しをしてしまうために、すぐに壁にぶつかり「できない自分」にたどり着く。いったん否定的な自己イメージが形成されてしまうと、自律的に学びに向かいにくくなるといえる。 |