高校現場の声と調査データから高校生・大学生の「自立」の実態を見てきた。 ここでは、高校生が自立しにくい要因を整理した上で、 高校段階でどのような指導をすればよいのかを考える。
大学入試の競争が緩和された結果、生徒は、無理をしなくても難関大に合格できてしまう場合がある。生徒はより高い目標に向かって挑戦するより、「そこそこでよい」という意識が強いのではないか。そのため、生徒は一つのことを本気で成し遂げ、その中から「達成感」を得る経験が乏しいとも考えられる。
ベネッセ教育研究開発センターが実施した「第3回子育て生活基本調査」で、中学生を持つ保護者に家庭の教育方針について尋ねたところ、近年「勉強のことは口出しせず、子どもにまかせている」の肯定率は減り、「親子で意見が違うとき、親の意見を優先させている」の肯定率が増加している(図)。子どもの教育に対し保護者が関与する度合いが強まっている様子がうかがえる。
学校週五日制などによって、教師が多忙化している中、時間をかけて生徒がじっくり考える力を身につけることに価値を置いた「待つ指導」が軽視されている可能性もある。 学習法や時間の使い方など、本来生徒が創意工夫を凝らしていくべきことに関しても、教師が先回りをしてあれこれと指示をしてしまうなど、生徒が自立に向かいにくい状況を教師の側がつくっているのかもしれない。