特に強化したのは、授業中の見回りだ。授業のない教師が教室を見回り、指導が必要な生徒がいたら、授業中でも教室に入って注意した。次第に生徒は授業によって態度を変えず、きちんと授業を受けるようになったという。
「どの教師からも同じ指導を受ければ、生徒は学校のルールと認識し、自制心が生まれます」と、大泉政弘教頭は話す。
ただ、一度に指導を厳しくしてしまうと生徒から不満が噴出しかねないため、段階的に厳しくするようにした。まずは頭髪について指導し、改善されたら制服、次にピアスと、一つずつ問題をクリアしていこうとした。指導に対して抵抗する生徒も一部にはいたが、むしろ教師が驚くほど素直に聞き入れる生徒が多かった。
「比較的まじめな生徒が髪を茶色に染めていたので理由を聞くと、『茶髪にしないとまわりから浮いて目をつけられる』と言われ、驚いたことがありました。多くの生徒はまわりに合わせたり流されたりしているだけで、本心から問題行動を起こしているわけではないとわかりました。そのため、指導を厳しくしても、目立った抵抗がなかったのだと思います」(大泉教頭)
これらの方法は、生徒を着実に変えただけでなく、教師の意識も変えるきっかけとなった。「これが改善できたのだから、次もできる」と指導への自信を深めていったのだ。
校内の雰囲気を大きく乱していた遅刻についても、ルールを統一した。時間を分単位でカウントし、累積時間により欠席日数を積み上げていく方法にし、指導を徹底させた。
「時間の計測は手間がかかりましたが、生徒には欠席扱いになることへの危機感が生まれ、遅刻者は大幅に減りました」(野田先生)
生徒が問題行動を起こす要因も取り除いていった。授業を抜け出した生徒の行き先を調べてみると、大半が校内の売店と自動販売機、来校する他校の生徒と会うことだった。そこで、授業中は売店を閉め、自動販売機の電源を切ることにした。学校の出入り口には当番制で教師が見張りに立ち、他校の生徒を断固として追い返した。
「生徒から何を言われても根気よく続けたことで、次第に『この学校には入れない』と思われるようになり、他校生が来なくなりました。これにより、校内の雰囲気はかなり落ち着きました」(野田先生) |