|
|
|
朝読書の導入が生徒と教師の意識を変えた
|
|
生徒指導を厳しくする一方で、生徒の知的好奇心を刺激する取り組みも始めた。
最も効果的だった取り組みは、毎朝10分間の読書だ。導入前には、「定着するはずがない」と効果に懐疑的な教師が少なくなかった。ところが始めてみると、多くの生徒が読書に没頭し、1日の中で校内が最も静まり返る時間となった。教室に生徒がきちんとそろい、学習に向かう雰囲気が生まれることで、1時間目の授業をスムーズに始められるようにもなった。
「遅刻指導と並行して導入したことによる相乗効果もあったのでしょう。漫画や写真集、教科書を除き、好きな本を自由に読ませたことも定着した要因だと思います」(大泉教頭)
朝読書は保護者からの評判も高く、ある生徒の父親は「うちの息子に読書習慣が身につくなんて思ってもいなかった」と、大喜びで電話をかけてきたという。
朝読書の成功は、教師の意識改革にもつながった。「『無理だと思っても試してみよう。仮に失敗しても別の方法を考えればよい』と前向きに対処する気持ちが生まれました」(大泉教頭) |
|
学校が落ち着いてから学力向上へ着手
|
|
改革開始から2年が過ぎた06年度ごろには、校内はすっかり落ち着きを取り戻していた。04年度には1日平均8人いた遅刻者が、06年度には2人に減少。授業中に歩き回る生徒はほとんどいなくなり、頭髪や制服の乱れも目立たなくなっていた。同校は、生徒指導の負担が軽減したことで、指導の重点を学習に移していった。
ところが、そこで初めて見えた課題があった。生徒の学習意欲の希薄さだ。
「自分に自信がなく、『勉強をしても意味がない』『どうせできない』といった消極的な生徒が多くいました」(野田先生)
生徒へのアンケート調査では家庭学習時間が「ゼロ」という回答が目立ち、学習の進め方を理解していない生徒も多くいた。そこで、06年度に「学習の手引き」という冊子を作成して配付。「高校から勉強をやり直しても遅くない」「勉強すれば着実に学力は伸びる」といった学習意欲を引き出すメッセージを強調した上で、学習計画の立て方、教科ごとの学習の進め方、自宅学習への取り組み方などを説明し、「やってみよう」という気持ちを起こさせるように努めた。
英検や漢検などの受検も奨励した。単に受検を勧めるだけでは「受かるはずがない」と敬遠する生徒が多いと考え、授業で模擬テストを行って「これなら自分も合格しそう」と思わせるようにした。更に、ベネッセコーポレーションの「進路マップ 基礎力診断テスト」を導入。テスト前には宿題として「One-week Trial」(注1)に取り組ませ、十分に準備をさせてからテストに取り組ませた。
「努力の成果がテストの結果として表れることにより、達成感を実感させることがねらいでした。成功体験を積み重ねることで、次第に生徒の中に自信が芽生え、テストを楽しみにする生徒も現れました」(大泉教頭)
また、大学進学希望者を対象とした「特進クラス」を、1年次に2クラス設置。補習と宿題の充実によって学力向上を支援し、キャリアガイダンスでは進学指導を重点的に行った。大学進学者が決して多くはない中で特進クラスを設置したねらいを、小泉いづみ校長は次のように話す。
「『これから学び直して大学に進学したい』という生徒は多くいます。学力には関係なくクラスを編成し、やる気のある生徒をとにかく支援することにしました」 |
|
注1)「進路マップ 基礎力診断テスト」の事前、または事後に取り組む学習教材 |
|
|