広島県立三次高校の2008年度国公立大合格者数は62名。60名を上回ったのは、1964年以来、実に44年ぶりのことだった。
県北の雄――。今年、創立110周年を迎えた同校は、旧制中学を前身とした、県内の伝統校の一つ。ところが、長らく国公立大合格者数1桁という低迷の時代が続いたこともある。中山間地に位置するこの地域は、過疎化が進む。更に、学力の高い生徒は、瀬戸内海沿岸部の高校へと進学していくのが現状だ。04~06年度に、地元の三次市内の中学校から校区外の高校に進学した生徒は年間約200名だった。
三谷弘子先生は「なんとか流出を食い止めて、成績上位層が入学してくる高校にしなければならないという大きな課題がありました」と話す。 少子化による定員減を前任校で経験し、4年前に同校に赴任した溝口徹先生が続ける。
「当時、本校にはまだ生徒が集まっていましたが、前任校での経験上、早く動き始めなければと思っていました」
そうした状況に同校が置かれていたときに、赴任してきたのが田邊康嗣校長だ。05年度に着任した田邊校長は開口一番、教職員たちにこう言った。
「変わらなければ!」
続いて、06年度に田中清裕教頭が着任した。その当時の様子を、瀬尾充秀先生は「伝統校という名の上に、教師はあぐらをかいていた面が確かにあり、それをだれも打破できませんでした。そこに、志を持った校長とノウハウを持つ教頭が赴任してきたのです」と振り返る。
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