私を育てたあの時代、あの出会い

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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先輩教師の言葉

大切にしていた
信念を受け継いでもらえた

静岡県立袋井高校教諭 TERADA TATSUYUKI 寺田達之
 きちんと読ませるということは、生きる力を付けるということです。だから文字だけにこだわることもありません。生活のすべてのシーンが国語の授業につながっていると私は思っています。
 では、きちんと読むということを意識した授業とはどういう授業でしょうか。私は、「遠州バサラの会」などで出会う若い先生たちにいつも尋ねています。例えば、『徒然草』で「仁和寺にある法師」を読んだとき、なぜ「ある寺」ではなく「仁和寺」でなければならないのか、そこにこだわった読みができているか。「仁和寺」である理由を教師はわかっていても、授業での配慮が足りなければ生徒はそこを気にせずに読んでしまう。仁和寺が文脈をつくっていることを教えて初めて、生徒にしっかり読ませたといえるのです。だから教師には、文章から時代や人間などを読み取るだけでなく、生徒がどう読むかを見通して、文章と生徒とのギャップを埋めていくことが求められます。
 渥美さんには、「教師は、授業中の言葉で生徒を動かす」という私の信念を受け継いでもらえました。そしてもう一つ、教育におけるユーモアの大切さも渥美さんはわかってくれました。授業中、みんなが笑ったときに自分だけ笑えない……生徒にとってこんなに寂しいことはありません。知的感動と結び付いた授業中のユーモアが、叱られても恥をかかされても勉強しない生徒を変える。そのことを知って、そして実践できる能力を渥美さんは持っています。
 渥美さんの発案によって「遠州バサラの会」は結成されましたが、私がこの申し出を受けたのは、教師が授業の悩みを共有し、成長できる場所をつくりたかったからです。会の模擬授業では、お互いの授業を見て、よいところも悪いところも素直に話し合うようにしています。よい教師は、授業が大好きで、そしていつも授業のことを考えています。優秀な教師を孤立させないということも、今の私の大切な役割だと思っています。
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