VIEW'S REPORT 生徒指導
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
  PAGE 2/4 前ページ 次ページ

修能試験を意識した授業と圧倒的な量のインプット

写真
ソウル市近郊の高校での英語授業風景。現在、韓国の高校では、試験などの結果評価だけではなく、日常的にどれだけ話したり、聞いたりできるかを評価する「パフォーマンス評価」の導入が進んでいる。簡単なインタビューやポートフォリオを集めて一連の過程を見ることで測るという

 今回、訪問したのは、ソウル市内および近郊の高校4校。そのうち3校は私立校だが、韓国の私立校はあくまで私企業などの寄付で建てられた学校で、近隣の地域の子どもたちが通うという点で、日本の公立高校と似ている。また、高校入試がないので、幅広い学力層の生徒が入学してきており、どの学校でも英語・数学については習熟度別授業を実施している。英語の授業はほとんど英語のみで進められ、難しい文法の説明も英語で行うなど、総じて授業のレベルは高い。ペアワークや発表など生徒の発話の機会は多いが、生徒は物怖じせず積極的に英語を使う。特に、小学校英語が必修化されたあとの生徒には、積極的な生徒が多いという。
 各校のインタビューから浮かび上がってきたのは修能試験の影響だ。どの学校でも、修能試験重視の英語教育を行っているとのことだった。一方で、教師の間には、リーディングとリスニングの問題で構成される修能試験はコミュニケーション能力の向上に直接結び付かない、という認識もある。生徒自身も高校の英語教育は修能試験に対応するためと割り切っており、スピーキングなどは海外留学や学校以外の教育機関を通して学ぶものと考えているようだ。
 授業でのインプットの量は日本の高校に比べて圧倒的に多い。特に力を入れているのが、文法と語彙だ。韓国では、小3~高3の10年間で一貫した英語教育カリキュラムを整備しており、スパイラルに学べるよう工夫されている。進度も速く、中学校段階で日本の高1レベルの文法事項を学習し終えている。宿題はほとんど課さないが、4校すべてで放課後に自主学習を奨励しており、ほぼすべての生徒が夜11~12時ごろまで学校に残って勉強するという。
 緑川教授は「英語力の決め手は文法力と語彙力。たとえ修能試験のための勉強でも、これだけインプットの量が多ければ、いざ実用英語に取り組んだときの習得は早い。ライティングの弱さもすぐに克服できるだろう」と指摘する。

東アジア高校英語教育GTEC調査2006
(出典/ベネッセ教育研究開発センター 『東アジア高校英語教育GTEC調査2006報告書』)

  PAGE 2/4 前ページ 次ページ