特集 つなぐ教師の教科指導力
湊 雅邦

徳島市立高校

湊 雅邦

Minato Masakuni
教職歴23年。同校に赴任して19年目。進路指導主事。前任校は徳島中央高校定時制。

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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【インタビュー】 私が考える教科指導 数学

いま持つ「知識」を使い
発想し展開する「考える力」を育てる

徳島市立高校 湊 雅邦先生

湊雅邦先生は、「数学では、公式や定理を覚える必要はあるが、
それは考えるための土台。重要なのは、知識を発展させ、
展開し、考えていく力」と強調する。いろいろな考え方で公式を理解し、
幅広いものの見方をできる力を育てる授業を展開している。

数学を通して多様な発想力を身に付けさせる

 「数学は暗記教科なのか、そうでないのか」
 これは、数学をめぐる議論で、時折、持ち上がる話題です。私は、ある面では数学に「暗記」は欠かせないと思います。解の公式、正弦定理、余弦定理…、どれも皆、頭に入れておかなければならない定理や公式ばかりです。
 単に、「丸暗記すればよいのか」というと、決してそうではありません。前提として、定理や公式をしっかり「理解」していることが重要です。その上で「覚える」。「定着」と言い換えてもよいでしょう。
 ただ、数学の場合、覚えた公式を基に「考える」ことが重要になります。身に付けた知識(基本概念)を基に、別の問題を解いたり、応用したりする発想力、展開力を養う。今風にいえば「頭をよくする」ことが、数学の役割だと思います。公式や定理を「覚える(定着させる)」必要があるのは、知識を活用して考えるための土台が必要だからです。
 私が数学の指導で最も大切にしているのは、「考えさせる」ことです。その原点は、私が中学3年生のときに教わった数学の先生の授業にあります。
 この先生の授業は、とにかく面白かった。生徒に問題を投げかけ、机間巡視をしながら生徒の理解度を把握し、適切なヒントを与えて徐々に解答へ導いていく。そのヒントが絶妙だったのです。少し考えれば解決できるようなヒントを、的確なタイミングで与えてくれる。問題自体も、学んできた知識を活用すれば解けるレベルに設定してあったのでしょう。数学が得意な生徒もそうでない生徒も、皆が授業に参加していたように覚えています。
 私自身その授業を通して、いま自分が持つ知識を基にして難しい問題を解く面白さ、考える楽しさを知りました。そして、数学に打ち込むようになったのです。

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