指導変革の軌跡 三重県立朝明(あさけ)高校
鈴木建生

▲三重県立朝明高校

鈴木建生

Suzuki Takeo

教職歴30年。同校に赴任して7年目。進路指導部長。「教師自身の成長しようとするエネルギーが生徒を育てる」

宇佐美尚

▲三重県立朝明高校

宇佐美尚

Usami Hisashi
教職歴13年。同校に赴任して11年目。1学年担任。「生徒には、その時々でできることに最善を尽くしてほしい」

郡正樹

▲三重県立朝明高校

郡正樹

Koori Masaki
教職歴9年。同校に赴任して5年目。進路指導部。「自分が今、力を入れていることに自信を持てる生徒を育てたい」

VIEW21[高校版] 新しい組織的な生徒指導による学校改革のパートナー
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目標を明確にすることで肯定的な自己イメージを築く

 教師と生徒の信頼関係づくりの一助として活用するのが、「進路目標達成シート」だ。目標を明確にして肯定的な自己イメージを築かせ、進路に対する前向きな気持ちを引き出すのがねらいだ。入学前にシートを渡し、あらかじめ学校生活の目標、卒業後の進路目標、具体的な行動目標などを記入させ、入学式の日に回収する。 4月の最初の面談ではこのシートを見ながら生徒と話し、信頼関係づくりに努める。1学年担任の宇佐美尚先生は、次のように話す。
 「面談では、将来の夢に目を向けて、高校生活の大切さに気付かせるように話しています。導入期では、学校に居場所をつくり、教師に相談すれば何とかなるという安心感を生徒に持たせることが重要だと思っています」
 これらの取り組みの成果を土台に06年度に導入したのが、冒頭紹介した教育コーチングによる面談だ。06年度の5~8月、および12月にコーチングの専門家を招き、教師全員が研修を受けた。一部の教師は、同じ悩みを持つ他校の教師や中学校教師と合同で定期的に研修会を行う。
 「教師一人ひとりが自分を高めようとする意識を共有しているのが本校の強み。現状を打開したいという意欲が、新しい手法を取り入れる土台となっています」と川瀬正次教頭は話す。
 教育コーチングによって、教師は生徒の声にじっくり耳を傾ける姿勢になった。進路指導部の郡正樹先生は、「沈黙が続くと口を挟みたくなりますが、無理にドアをこじ開けようとすると逆に生徒は心を閉ざしてしまうものです。沈黙を大切にするようになったことで、生徒の心の奥深くまで入れるようになりました」と話す。
 導入期指導の充実、集団づくり等の諸施策により、08年度の1年生は2学期の時点で、退学者はゼロだ。

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