指導変革の軌跡 三重県立朝明(あさけ)高校
VIEW21[高校版] 新しい進路意識向上のパートナー
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ファイナンシャル教育で健全な金銭感覚を養う

 同校はキャリア教育の一環として金銭教育にも力を入れる。「就職後は、お小遣いとは桁違いのお金を手にします。生徒の中には経済的に苦労している家庭もあり、金銭感覚が身に付いていないこともあるからです」と郡先生は話す。
 同校の金銭教育は、5年後、10年後の生活を考えさせることから始まる。家や車を購入するのか、食費や衣料にお金をどの程度かけるのか、理想の生活を考えながら、それぞれにかかる費用を記入させる。その金額を実際の初任給と比較させるが、多くの場合、理想には届かない。「現実の厳しさを知ると同時に、育ててくれた両親に感謝してほしい」と郡先生は話す。
 この結果を踏まえ、理想に近づくために、何を削るべきか、どのようにお金を増やすのかをグループで考えていく。「宝くじを買い続ける」「パチンコで稼ぐ」といった非現実的な意見が飛び交う中、「資格を取る」「役職を上げる」など堅実な答えが出てくるまで教師はじっと待つ。「保護者がお金に無頓着であれば、子どももその影響を大きく受けます。その連鎖を断ち切るのは教育です。お金の問題から目をそらさずに向き合うことが、これからの学校教育には欠かせません」と、鈴木先生は強調する。
 人間関係の構築、キャリア教育の充実により「生きる力」の育成に取り組む朝明高校。今後の課題は授業の充実だ。現在、同校ではグループ学習を取り入れた授業改革を進めている。学び合う集団をつくることで、学習意欲を高めていく。 川畑幸永校長は次のように抱負を語る。
 「6年間、改革を意欲的に進めてきましたが、その精神と手法はすべての教師に浸透しつつあります。今後は、それを具体的な成果に結び付けていくとき。生徒が自らの成長を実感できる学校を目指し、常に生徒の視点に立った改革を続けていきたいと思っています」

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