工藤
(聖光) |
CEPに企画参画して良かったと思うのは、企業で働いている方と、直に触れ合う機会を持てたことです。今の子どもは、保護者や教師以外の大人と接する機会が少なくなっています。ともすれば、今の子は「サラリーマンになるのはいや」と答えます。彼らの口から出てくるのは、弁護士や医者、公認会計士といった職業です。つまり、生徒たちはサラリーマンを、非常に狭いイメージでしか思い描けていないのです。実際に企業で働いている人に会うことによって初めて、彼らは企業には多様なキャリアを持っている人が、それぞれ志を抱きながら働いていることに気づくわけです。 |
清水
(鴎友) |
その点は私も同感です。昨年度はCEPの「10年後の働き方を体験しよう」(図3参照)というプログラムを受講して帰ってきた生徒たちの表情が、見違えるように生き生きしていました。聞けば、講師役の女性社員の方々から、自分の10代からのキャリアグラフを基に、進路選択、挫折、実績の積み上げなどを経て、今どんな思いを持って仕事をしているのかを、じっくり聞くことができたようです。生徒たちは、文理選択・学部学科選択を経て大学に進学し、その後の職業選択も、一本のレールで進むといったイメージを持ちがちです。しかしこのプログラムでは、生徒たちは「自分が働いている10年後」をまさに現実感をもってロールモデルとしてイメージできたはずです。これはとても貴重な学びになりました。 |
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土岐
(西武) |
CEPのように学校以外の場所で生徒に体験学習をさせるときには、生徒がそこでどんな体験をしてきたかを、教師がきちんと把握することが重要だと思います。生徒が体験型学習で得た知的好奇心や興味・関心を、学校の授業にうまく生かすことができるかが、ポイントなのでしょう。例えば、昨年参加した「どうして飛行機は飛ぶのだろう」では、講義の時間に飛行機の揚力の原理を「数学」の理論をひも解いて、話してもらっていました。これなどは学校の教科書が、社会や原理とつながっていることを実感できたのではないでしょうか。
また、本校の理数科では、高1・2年生の1年半をかけて「先端科学講座」と題して、授業時間にCEPを実施しています。昨年から「ロボットを作ろう、動かそう」を受講した現高2・3年生は、9月の文化祭で作品発表会を行いました。元は四足歩行ロボットだったものが、クモやヘビのような生き物になったり、人気アニメのキャラクターを模してデザインされるなど、複雑な動作設計を組み立て、生徒の創意工夫が存分に発揮されていました。これは、体験に知的触発を受けた生徒たちが自ら発展させたものです。体験型学習は確かに必要ですが、それだけを行っていれば生徒が変わるわけではありません。単発のイベントに終わらせず、そのほかの教育活動と有機的に結び付けていくことが大切です。 |
清水
(鴎友) |
体験的な学習やキャリア教育などを通じて、生徒に学ぶ意義を認識させることの必要性は、文科省も改めて発信しているところです。生徒の学力を伸ばそうと思えば、授業時数や補習の時間を増やすことよりも、生徒自身に学ぶ意義を実感させて学習意欲を高める方がはるかに有効です。体験型学習に積極的に取り組む学校や先生が、1校でも1人でも増えてほしいですね。
(敬称略) |