「大学に進学すると、地元に戻らないのではないか」と不安を抱き、「大学より短大、短大より就職」と考える保護者もいる。しかし、同校の開校によって、小学校段階から子どもの適性に合った進路を保護者が考えるようになるなど、地域では教育に対する関心が高まっているという。
ただ、同校を取り巻く環境は依然として厳しい。2期生(現3年生)では、内部進学をせずにほかの高校に進学した生徒が13人もいた。成績上位層が、町立中学校を経て新潟市内の進学校を目指す流れも変わっていない。開校以来、中学入学段階では定員40人をほぼ満たしてきたが、08年度の新入生は29人に落ち込んだ。
だが、宮入先生は「本校の進学実績が上がれば、『地元でも大丈夫』という気運が高まるはず。学力の高い生徒にもっと入学してもらい、校内に刺激を与えてほしい」と話す。同校には、地元の子どもが充実した高校生活を送るための受け皿として存在意義があるからだ。
「町外の高校に通う場合、通学時間がかかるために部活動ができず、勉強だけの学校生活になることも多いようです。勉強と部活動を両立できるのは、本校に通う大きなメリットだと思います」
加藤弘校長は、「これまでは『本校でも大学進学は大丈夫です』と言葉で説明していましたが、1期生が実績を残しました。今後、お金と時間をかけて町外の高校に出なくても、大学進学と部活動を両立し、高校生活を楽しめることをアピールしていきます」と意気込む。岡村教頭も「ここが頑張りどころです」と語気を強める。
同校の教師は平均年齢約35歳で、赴任2、3校目という先生が多い。加藤校長が「若手でなければ持たないでしょう」と言うほど、教師全員が日々、学級、学年、中学校・高校の壁を超えて、生徒と向き合っている。中学教頭も週7時間、数学の授業を担当しているほどだ。
中高一貫校の立ち上げにかかわった教師は、全員異動した。人が替わってもつくり上げてきた指導体制を続けるには、「仕組み」だけでなく「思い」も引き継いでいくことが重要だ。同校の活性化が、地元の子どもの学ぶ意欲に、充実した高校生活に、そして地域の活性化につながる――。そうした思いを抱く教師の奮闘は今も続く。 |