指導変革の軌跡 鹿児島県立喜界高校
鹿児島県立喜界高校

鹿児島県立喜界高校

◎奄美群島の1つである喜界島唯一の高校。アメリカ軍政下にあった戦後間もない時代に、島の若者らの働きかけによって設立され、本土復帰時に鹿児島県立の高校に移管されたという歴史がある。校訓は「自主自立」「開拓創造」「公徳奉仕」。2000年度に島内の中学校3校と連携型の中高一貫教育を始めた。

設立●1949(昭和24)年

形態●全日制/普通科、商業科/共学

生徒数(1学年)●約80名

08年度進路実績●国公立大は、大分大、鹿児島大、琉球大、宮崎公立大に合格。私立大は、明治大、東海大、同志社女子大などに延べ10名が合格。短大、専門学校などへの進学が32名、就職が35名。

住所●〒891-6201 鹿児島県大島郡喜界町赤連2536

TEL●0997-65-0024

WEB PAGE●http://www12.
synapse.ne.jp/kikaihs/

VIEW21[高校版] 新しい組織的な生徒指導による学校改革のパートナー
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指導変革の軌跡114


鹿児島県立喜界高校 「地域特性を踏まえた中高一貫教育」

中学校と連携した進路指導で
卒業前に全員の希望進路を実現させた

● 実践のポイント
中学時代から高校卒業後の進路を具体的にイメージさせる
教師全員にアンケートを行い、現状に合わせて取り組みを精選する
徹底的に個に応じた指導で、卒業前に全員の進路を決める

中高連携が安心感を生み生徒の生活態度が落ち着く

 鹿児島本土から南に380㎞の位置にある喜界島は、人口約8000人、主力産業はサトウキビ栽培を中心とした農業という島だ。毎年秋に行われる町民体育祭は、子どもから高齢者まで島中の人々が参加し、集落対抗で盛り上がる一大イベント。島唯一の高校である喜界高校の生徒も大半が競技の主力メンバーとして参加し、ボランティアで運営面にもかかわる。今も住民同士が密接にかかわり合いながら生活している地域だ。
 島内には三つの中学校があり、ほとんどの生徒が喜界高校に進学する。地域の教育が校種を超えて密接に関係していることから、同校と三つの中学校は2000年度に連携型の中高一貫教育を始めた。03年度には文部科学省の研究開発校の指定を受け、本格的に導入。国・数・英における中高間の乗り入れ授業、「総合的な学習の時間」での6年間一貫の郷土学習「きかい学」などを行ってきた。毎年7月には大学・短大・専門学校約30団体を招いて中高合同で進路講演会を開き、高校卒業後は9割以上が島外に進学・就職するという生徒の、進路意識の涵(かん)養にも力を注いでいる。
 これまでの成果として一番に挙げられるのは、生徒の生活態度が落ち着いてきたことだ。遅刻の年間件数は、03年度に967件あったが07年度には130件にまで減った。08年度には、生徒会の役員が朝、校門に立ち、遅れてきた生徒に「明日から8時20分までには学校に来ましょう」と書かれたプリントを渡している。これは生徒が自主的に始めた活動だ。山下茂久教頭は、中高一貫教育によって、中学生の高校に対する不安が和らいでいることが大きいと話す。
 「生徒は皆、顔見知りという環境で育っているため、高校に入り環境が変わることに強く不安を抱いています。乗り入れ授業などを通して、高校の教師を事前に知ることで、生徒は入学後、スムーズに環境に馴染めるようです。教師は授業開始前に教室に行き、生徒に声をかけるようにしていますが、そうした指導も素直に受け入れられるようになりました。地域の方からも『生徒が落ち着いてきた』とよく言われます」

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