指導変革の軌跡 鹿児島県立喜界高校
山下茂久

▲鹿児島県立喜界高校教頭

山下茂久

Yamashita Shigehisa
教職歴28年。同校に赴任して3年目。「生徒第一に、和を大切にした指導を心がけていきたい」

肥後盛秋

▲鹿児島県立喜界高校

肥後盛秋

Higo Moriaki
教職歴13年。同校に赴任して3年目。教務主任。中高一貫係。「いろいろな人の意見を取り入れながら、しっかりとした取り組みをしていきたい」

上村武志

▲鹿児島県立喜界高校

上村武志

Kamimura Takeshi
教職歴10年。同校に赴任して6年目。進路指導部主任。「高い目標を持ち、継続は力なりで頑張れる生徒を育てたい」

福原 健

▲鹿児島県立喜界高校

福原 健

Fukuhara Ken
教職歴8年。同校に赴任して4年目。進路指導部副主任。3学年主任。「1年生は挑戦、2年生は我慢、3年生は飛躍と伝え、日々授業をしています」

VIEW21[高校版] 新しい組織的な生徒指導による学校改革のパートナー
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中学校に高校の進路情報を伝え自分の将来を考えさせる

 喜界地域における中高一貫教育は、生徒指導上の落ち着きという一つの成果を得て、07年度からは進路指導に重点を置いている。島に高等教育機関はなく、就職先も極めて限られるため、卒業後は9割以上の生徒が島外に進学・就職する。進学・就職の両実績の向上が地域から最も期待されていると、進路指導部主任の上村武志先生は話す。
 「保護者は、本音では子どもを手元に置いておきたい。しかし、進学・就職のいずれにしても、一度は島を出なければならない。高校が進路面で信頼できるかどうかは、保護者にとって切実な問題なのです」
 同校が特に留意したのは、中学時代から進路をしっかりと意識させることだ。生徒や保護者にとって重要なのは、進学したとしてもその先にある「就職」だ。ところが、生徒も保護者も就職に関する知識は少なく、視野が狭い傾向にあった。実際、07年度に過去5年間の専門学校進学者の追跡調査を行ったところ、専門学校の分野に関係なく就職した卒業生が半数を超えていた。
 そこで、年2回行われる4校合同職員会議において、同校は資料を事前に配付。当日は高校の進路指導部がスライドを用いて専門学校進学者の追跡調査の結果を報告したほか、3年生の進路決定状況の中間報告や卒業生の進路状況を重点的に伝えた。中学段階で意識すべきことを積極的に発信し、進路指導における共通理解を図った(図1)。中高一貫係の肥後盛秋先生は、そのねらいを次のように話す。
図1
  「『進路のために基礎学力の向上を』といっても、最終的な目標がわからなければ中学校も動きにくいと考えました。卒業生の状況を交えながら、高校での進路指導の現状をきちんと伝え、どういう力があればどういう進路が考えられるのか、中学校の先生に実感してもらいました」
 07年度からは高校が月1回発行する「進路だより」を中学校でも配付してもらい、高校での取り組みをリアルタイムに知ってもらうようにした。ここに掲載される3年生の進路についての成功談・失敗談を通して、中高一貫入試で入学した生徒にとって人生で初めての競争がいかに厳しいものかを感じてほしい、というねらいもある。08年2月にはある中学校の依頼で、進路指導部副主任の福原健先生が、その学校の全学年を対象として高校の進路指導について講演をした。
 「高校の先生が話すことによって、生徒が現実味を感じると言われ、高校卒業後の進路について、先輩がその進路を選んだ理由、指導上で困ったことなどを交えながら話しました。多数の保護者も来場していて、進路を考えることが根付き始めていると感じました」(福原先生)

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