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先輩教師の言葉
生徒と向き合い
私のすべてを受け継いでくれた
京都府・洛南高校
白潟一則
教科指導のノウハウは先輩教師としてある程度教えることができても、生活指導や進路指導など、生徒一人ひとりに向き合う指導は、言葉で教えてわかるものではない。私はそう思っています。だから、新任として私の隣の席に座った菊池先生には、聞いて習うより、私自身を見てそこから学んでほしいし、そうしてもらうしかないと思ったのです。だから、最初の1年間は、ほとんど話をしませんでした。今思えば、辛抱強く付いてきてくれたと思います。
寮の副舎監として働いてくれたとき、菊池先生には、学校から寮に帰ってきたら、教師であることを忘れて、1人の人間として弱さや醜態も生徒に見せてほしいと思っていました。寮は生徒にとって生活の場です。私たちが教師のままでは心が安まりません。兄貴のように、父親のように、素顔の自分で振る舞ってもらいたい。でも、そのことも生徒と接する中で気が付いてほしい。だから私は「とにかく部屋を回れ」とだけ言ったのです。夜中に1人悩んでいる生徒に接することで、菊池先生はそのことにすぐに気が付いてくれました。
担任としても、具体的にクラス運営についてあれこれと教えたことはありません。ただ、生徒が気持ちよく1日を過ごすことができ、そして勉強しようと思える環境をつくることの大切さに早く気が付いてほしいと思っていました。実際、教室をきれいにするといったことを私のクラスはとても大切にしていたのです。最後に強いのは、生徒が勉強をしようという気持ちになれる環境が整っているクラスです。勉強するのは生徒本人であり、私たち教師にできることはその環境をつくることだけなのですから。
菊池先生とはもう21年の付き合いになります。確かに言葉で引き継いだものは少なかったかもしれませんが、生徒と向き合う姿はたくさん見てもらえました。そして、生徒指導に関しては、私の持っているものは全部菊池先生に渡すことができた、と思っています。
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