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義務教育との接続
今回の改訂では、義務教育段階での学力向上を図るため、特に数学と理科について、前回の改訂で中学校から高校に移行した項目の多くを再び中学校に戻し、その分、高校段階で削除した項目を新しく加えています。それに伴い、「義務教育段階の学習内容の確実な定着」が初めて明言されました。
総則には次の三つの例が挙げられています。
義務教育段階の学習内容の定着を図るための学習機会を設ける
必履修教科・科目の単位数を増加させ十分な習得を図る
(義務教育段階の学習内容の定着を目的とした)学校設定科目を開設し、必履修科目の前に履修させる
学習指導要領に義務教育段階との接続が明記され、総則に具体的な方法まで記されるのは初めてのことです。既に多くの学校が、入学前に学力診断テストを実施したり、入学前課題を出したりして、生徒の学力把握と学力定着に力を入れています。今回、総則に記された点に、強いメッセージが読み取れます。
はどめ規定の撤廃
学力低下の指摘に留意して、「はどめ規定」が原則、削除されることになりました。生徒の実態を踏まえて、より深い学習内容を指導することも可能となります。
言語活動の充実
各教科等の中に「言語活動の充実」が明示されたことも、大きなポイントの一つです。
数学では、例えば「自らの考えを数学的に表現し根拠を明らかにして説明したり議論したりする」、公民では「資料の収集、選択、読み取り、解釈や論述、討論などの学習活動の重視」というように、各教科で記録、論述、討論などの学習を充実させることが明記されました。
「言語活動の充実」をどのように指導に盛り込めばよいのか、不安に感じるかもしれません。しかし、これらは新しい取り組みなのかというと、決してそうではありません。例えば、数学の授業で、生徒に立式の過程を黒板に書かせ、教師が解説を加えるという指導は、普段よく行われていることでしょう。この場面を利用して、問題の解答・解説を黒板に書いた生徒自身、またはほかの生徒にさせるといった活動も、言語活動を重視した取り組みに当たると思います。
つまり、「言語活動」という観点を意識しながら、これまでの指導を整理してみることが大切です。
また、学習指導要領に盛り込まれたことは、教科書に反映されます。教科書も含めて、指導方法などを検討することが求められます。
英語は英語を使って授業
「言語活動」に関連して、「英語の授業はすべて英語で行うことを基本とする」という方針も打ち出されました。これは、マスコミでも大きく取り上げられました。 基礎学力が不足している生徒が多い高校では、英語の授業をすべて英語で行うと、生徒が拒否反応を示すかもしれません。大学入試との関連も、課題の一つだと思います。まずは、先行して実施される小学校、中学校での英語の指導との関連を考慮し、なおかつ生徒の実態を踏まえて、英語を使って授業を進めていくことが求められます。
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